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春雨
【純愛 恋愛小説】

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Rainy day vol.3-3

見合い当日

前日に届けられた綺麗なピンク色の振り袖を目の前にして私は溜め息を吐いていた。
着付けは幼い頃に躾られたから自分で出来る…。
髪を結うのだって…。

時間は掛かったが支度を済ませ、迎えの車に乗り込んだ。


「…春美さま、ご自分で?」
迎えに来た運転手ー吉野さんが感嘆の声を洩らした。
「…昔、躾られたんで。
…変じゃない?」
私の問いかけに彼は、
「お綺麗ですよ?」
と、微笑んだ。

甘いマスクに落ち着いた物腰…。この笑顔に一体今までに何人の女が堕ちたのだろうと、思ってしまった。

ホテルに着いて、すぐに見覚えのある顔を発見した。
「…比嘉会長…?」
私の声に隣の青年が反応を示した。
「あぁ、久しぶりだね。みぃちゃん」
比嘉会長の言葉に隣に立つ青年はただ、呆然と私を見つめていた。
「御無沙汰しております。
祖父はもうすぐ到着予定ですので…お待たせして申し訳ございません。」
私は完璧な作り笑顔を維持したまま頭を下げた。


「将生<マサキ>」
不意に祖父に呼ばれ、彼の思考は現実へと引き戻されたようだった。

「…久し振りね。」そう言って私は微笑んだ。
「……お久しぶりです」
彼が返すと、会長に
「知り合いか?」と、不思議そうに尋ねられた。

「えぇ…以前何度かお会いしたことがありまして。」と、私は笑顔を崩さず答えた。

そして、ようやくうちの会長が到着して、私達は中庭を臨む立派な和室に移った。

――――――
――――

元々、祖父達の再会のために設けられた見合いということもあり、お互い軽く自己紹介をしたあとは早々に部屋を追い出されてしまった。

彼は私の紹介の時、驚きの表情しか浮かべていなかったことからも、釣り書を見ていないことが明白だった。


追い出された私達はホテルの中庭を散歩していた。

彼があまりにも溜め息ばっかり吐いてるので、
「釣り書みなかったの?彰太クン」
と、人工の滝を眺めながら尋ねた。

「……春美さんはいつから知ってたんですか?」
脱力し切った状態での彼の質問に
「貴方と二度目に会った直後くらいかしら?」
と、記憶を手繰り寄せて答える。

「……今日会えることが分かってたから黙って引っ越したの?」
「単に予定日だったからだけど…あの時の貴方なら私が居なくても平気だろう…と、思ったのも事実よ。」

…嫌われてはいないようで嬉しかったが、それを悟られぬよう淡々と答えた。

「じい様達の前と態度違いすぎない?」
「言ったでしょ?中身は変わらなかった…って。」と、言って私は溜め息を吐いた。

私のその言葉に彼が笑うのを見て、ホッと胸を撫で下ろした。


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