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異世界の放浪者
【ファンタジー 恋愛小説】

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異世界の放浪者 第三話-1

「そこらへんのイスに座って」
俺を召喚したであろう者に会いミルラの家にその人を連れて戻ってきた。
ミルラは俺と召喚者をイスに座らせ、お茶の入ったコップを俺と召喚者に手渡しベットに腰を下ろした。俺を召喚した魔法使いの杖は自分の背丈ほどある杖で先がクネクネ入り組んでいる杖だった。彼女はその杖を片手で大事そうにもち、もう片方の手でコップを受け取り口にチビとお茶を運ぶ。取りあえず俺もコップを受け取り召喚者の頭に付いている耳を見た。よくみるとピクピクと小刻みに動いている。作り物じゃないことが即座にわかる。
「あの…変ですか?」
不意にその視線の下から声がする。
「いや別に…」
そう言って俺は手元のコップに目線を落とす。
「取りあえずちょっと質問していいかしら?」
「はい。なんなりと」
そして召喚した理由を問う質問が始まった。


召喚者の名前はポポ。年齢は俺とそう変わらなかった。ポポは召喚に失敗してこの街に召喚してしまったと答える。
ここまでの証言にミルラが発動していた嘘発見魔法は反応しなかった。つまりポポの言っている事は全て本当のことになる。
「でも召喚魔法を失敗するなんて珍しいわね…」
「サーチ召喚だからですよ」
ミルラはほぉーとした顔をした。
「何ですかそれ?」
俺は尋ねる。
「ちょっと特殊な召喚の方法でね…。普段の召喚魔法はなんの条件なども指定もせずに何処かの世界から適当に召喚するのよ。サーチ召喚はそれを指定することなの。世界、性別、体格、種族、などなどね。でもそれを行える者は少なく高度な魔法使いでなければ召喚場所を指定したりできずに失敗する人が多いのよ」
「つまりそれで俺は…」
「召喚した人がいなかったってことね」
「すみません…」
ペコリと俺に頭を下げる。
その時のポポの耳はしんなりと曲っていた。
全くだっと思いたくても可愛らしいポポを目の前にしては思えなかった。
「それでまぁ一応成功って事にしておいて…召喚した理由って何かしら?」
しんなりしていた耳がいきなりピンと張る。ポポはコップに目線を落とす
「えっと…お礼が言いたかったんです」
もじもじと恥ずかしいそうに言う。
「え?」
「は?」
俺とミルラは声を揃えて言う。
ポポはその疑問系を無視し続けてその何やら昔話をした。





今から数年前の事。この世界で大規模な大量召喚が起こる少し前の事であった。ポポはとある川の橋の下に捨てられた子犬だった。人が橋の下を通るはずもなくお腹も減り、大粒の雨が降る日。もう助からない、そう思いながら深い眠りに付く直前だった。
「うわ〜びしょ濡れだ」
一人の男の子がそう言いながら橋の下にきた。見た目からして小さい子供。背中には黒いランドセルを背負っていた。
「んっ?」
彼はポポを見るなり近寄る。体がぐったりしているポポを見て男の子は手をさし延ばす。ポポは弱々し鳴いた。まだ生きていると確信した男の子はランドセルから給食に出てくる紙パックの牛乳を取り出し、持っていたハサミで紙パックの先を切りポポの口元に差し出した。牛乳を差し出されたポポは無意識にその牛乳を少しずつ飲み出した。
あっとゆうまに飲み干したポポ。まだ物欲しそうに鳴くポポに少年は困っていた。
(もう何もないしな…)
そう思いつつ子犬を抱き上げる抱きかかえる少年。あといま少年にできるのはこれだけだと思うのだった。
「家マンションだから飼っちゃいけないんだ…ごめんね?」
そう言って少年は体全体を使って子犬を包み混む。
「またここに来てあげるからな」
そう言って少年は時間の許す限り子犬を温めたのだった。


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