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彼な私
【少年/少女 恋愛小説】

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彼な私-15

「…春樹…これ…」
「ちゃんとしたかったんだよ。あのときの指輪安物だったから…」
「でも…」
「貸せよ」
春樹、立ち止まり私の手から紙袋を取り上げた。
「はい…」
中から小さな箱が出てきて、私の手の上にちょこんと乗った。
「…開けてい?」
春樹、私の問いかけにゆっくり首を縦に動かした。
中にはシルバーのペアリング…
―…え…
「指輪交換みたいだろ」
そう言いながら春樹は私の左薬指にゆっくり、収めるようにはめていく。
「おれもやって」
左手を差し出す春樹…
どきんっ
春樹の大きな手と子供の様に無邪気に笑う笑顔が、愛しくて、可愛くて、涙でぼやけて上手く指輪が入らない。
「泣いてるタケ子、すげー色っぽい…」
そう言って春樹は私にキスをした。
春樹の熱い唇に私の体も熱くなる。どきどきしてむずがゆい…
―…春樹…
だけど、頭の隅にちらつく杏…
もうどうしたらいいのか分からない。
ただ、もっと触れられたいっ春樹に。そして、もっと触れたいっ杏に…
その夜、私は一晩考えた。
そして私は決めた。もう、もう悩まない。だって考えても同じ答えに行き着くから…
私は二人が好き。その答えに。
自分が男なのか女なのか、それすら分からなくなってしまった。だからはっきり分かる好きだという気持ちを、もう迷わないことにした。
もしかしたら二人とも失ってしまうかもしれない。でももう決めたのだ。
だから今日は気合いを入れた。ばっちりメイクをして、春樹にもらった指輪を左の薬指にはめ、みんなの分のお弁当も持った。
―よし!!
学校が徐々に近づいてくる。それと同時に心拍数が上がる。
―…ううん、大丈夫!!
呼吸を整えて、力強く一歩踏み出した。その時…
「タケ子!!おいっ大変!!」
尚だ、尚が学校から飛び出して来た。
「何?私もう悩まないことにしたの」
「そんなこと言ってる場合じゃねーよバカ、いいから来い」
「え…ちょっ…ええ?!」
尚、私の手をすごい勢いで引いていく。
―は…はい?
訳が分からない私だったが、校門をくぐるなり頭の中が真っ白になった。
あんなに気合いを入れたのに…どこに行ってしまったのか…そこにはにらみ合う杏と春樹の姿があったのだ。
―あわわわわ…ど、どどど、どうなって…どうなって…どうなってんの?
「こ、これ…これ…」
かすれ声で尚に訴えた。
「だろ?いや〜大変、大変面白いっ!!なっ、タケ子!!」
尚は満面の笑みで二人を見つめている。
―ええ!?そうなの!?面白いの!?
「私負けんけん、タケ子君が私だけを見てくれるように頑張るっち決めたけん」
杏、皆の注目の中、春樹に言い放つ。
「頑張るのは勝手だけど、タケ子と並んで歩くのやめた方がいいよ。引き立て役にしかなんねーから」
春樹は相変わらず真顔で返す。
「タケ子君!!」
私に気づいた杏が駆け寄ってきて、私の腕に自分の腕を絡ませてきた。
―あ…あ、杏…
「えと…あの…」
「私、決めたと、諦めんけん、ずっと考えたんやけど、考えても考えてもタケ子君が好きっち事しか浮かんでこんし、だけんタケ子君が好きっち言ってくれたの信じる事にしたと」
ドキン…
柔らかな声が響き、杏のいい香りが広がった。
「…タケ子が俺のものだという証拠」
春樹が私の左手を自分の左手に光る指輪と共に杏に突きつける。
どきんっ
―は、は春樹…
「なっ、なん指輪くらいっ!!私なんかタケ子君とチューしたっちゃ、2回も!!」
―ヒィー…あ、あ杏ー…
「はぁ?!ばかじゃねーの、キスくらい俺もしたし、しかも濃厚なの」
―ヒェー…は、は、はは春樹ー…
「タケ子君は体は男やけ私に反応するやろー!!」
杏、私の体を引き寄せた。
―きゃー杏!!
「男同士だって穴がありゃ出来んだよ」
春樹、杏の方へ傾いた私の体を肩を抱いて引き戻す
―ぎゃー春樹!!
「はぁ?!私が守るちゃ、タケ子君の処女!!」
杏、力強く私の腕を引っ張る。
―も…も、ももう…やめ…
「こらー!!さっさと教室入れー!!」
人垣の中から南原の声がこだまする。
私の手からスルリと鞄が落ち、きっとお弁当がぐちゃぐちゃね…なんて冷静に思ってみたり…必死笑いをこらえる尚を横目で見たり…だけどこの状況が変わるわけもなく…
―ああぁぁぁぁ〜…
ヒートアップする二人の言い合いに意識が薄れゆく私は…
―…幸せ…
を噛みしめていたのだった。


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