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彼な私
【少年/少女 恋愛小説】

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彼な私-1


私が両親にカミングアウトしたのは五歳の時…両親は冗談だと思ったのか大笑いしただけだった。だけど、歳を重ねるにつれ顔をこわばらせていく。
「よう、はよータケ子」
クラスの男子がすれ違いざまに私の肩を軽く叩いた。
「おはよー」
赤いリボンのセーラー服。スカートはもちろん膝上で、肩までのびたサラサラの黒髪が私の自慢。日焼けしないようにお手入れを欠かさず、美白、まではいかないにしても白く潤った肌を保ってて、美人じゃないけど、クリクリした大きな目と小顔効果で可愛い系を貫いている。だけど、貧乳なのが今一番の悩み…
「タケ子おはよー、あっ、タケ子口紅の色変えてるーかわいいじゃん」
また肩を叩かれた。今度はクラスの女子。
「おはよー、似合うかな〜?」
「似合う似合う!!タケ子肌白いし、マジかわいい」
私、にっこり微笑み返す。
「本田(ほんだ)!!ちょっとこっち来い!!」
いきなり腕を掴まれた。体育教師の南原(みなみはら)だ。
「きゃ、いやん痛ぁ〜い」
「何がきゃだ、何がいやんだ、なーにーがー痛ぁ〜いだー!!お前が着るべき制服は学ランだろがーー!!」
「いやぁ〜ん」
この春、高校三年生になりました。
これが私、本田 タケ子(ほんだ たけこ)本名:武彦(たけひこ)のいつもの登校風景。
―やだ〜またこんなの着せられた〜
南原に連れて行かれた私は無理やり学ランを着せられ、髪を縛られ、メイクを落とされた。
―恥ずかしい〜
「本田…毎日よくやるな…」
とぼとぼ教室に向かう私に語りかけてきたのは担任の山下(やました)。
「山下先生〜、先生からも言って下さいよぉ〜法律だって認めたじゃないですかぁ〜私、性同一性障害っていう立派な病気ですよぉ〜?差別ですよぉ〜」
「まぁ…けどまだ戸籍上男だし…」
「ひどぉ〜い、心は女ですぅ〜……あれ?誰ですか?」
私の目に山下の横に立っている女生徒が映った。
「ん?ああ、転校生、ってほら、教室行くぞ」
「はーい」
転校生はショートカットで体育会系って感じ。九州から来たそうで、言葉のなまりがくすぐったい様な、心地いい様な、なんだかちょっと懐かしく感じる。宇神 杏(うがみ あんず)期待を裏切らず陸上部だったとのこと。
「タケ子、お弁当さ宇神さんも一緒していい?」
「いいよ〜食べよ、食べよぉ〜」
私の自慢はサラサラな髪ともう一つは、お料理!!だからいつも大きなお弁当箱で作ってきてみんなで交換しながら食べるのだ。
「すごっ、これ一人で作ったと?」
さらりとなまる言葉で私を見つめる宇神 杏。
「え、そ、そう、好きなの私、お料理!!」
「タケ子ねー居酒屋開くのが夢なんだよねー」
私のお弁当に手をのばしながら言ったのは、夢子(ゆめこ)。
「本名、武彦だけどな」
意地悪く笑うのは、尚(ひさし)。
「いやぁ〜ん、本名言わないでよ〜、恥ずかしい!!」
「あっ、放課後チアの練習だからね、タケ子は衣装合わせまだでしょ?」
体育委員の奈美(なみ)。
5月の連休明けから日に厳しくなる体育祭の練習。奈美は高校最後だからと気合いが入りっぱなし…
―どうして紫外線が強くなる時期にするのかな〜…
「焼けちゃう〜」
「顔グロタケ子もいけるかもよ」
いつも真剣な顔で言う木村 春樹(きむら はるき)。
「ねー宇神さん、陸上で何してたの?体育祭でるよね」
奈美、身を乗り出して言った。
「あ〜…うん長距離、ねぇ、宇神さんじゃないで杏っち呼んで、何か変な感じがするっちゃ」
―…‘ちゃ’…やん、方言かわいい!!
そしてその日からクラスの中に‘ちゃ’ブームがやって来た。ちゃ。

次の日も朝から体育祭の練習…
―や〜ん…焼けちゃうよ〜
三年生はフォークダンスがあり、今から入場の練習。入場の時男女が手をつなぐ、私はもちろん女子列。で、入場の相手は春樹だ。
「タケ子…」
皆がだらだら整列をしているなか、春樹が隣にやって来た。
「何〜?」
「俺、昼休みちょっと用事あるから、弁当俺の分とっといて」
「うんいいけど…何〜用事って〜」
「うん、何か1年の女に呼び出された」
「え…ええ?!や〜だ〜それって…」
私の声が大きかったのか、春樹が私の口を塞いだ。
「…あいつらには言うなよ、面倒だから」
「………」
私、無言のまま首を縦に何度も振る。
「…振りすぎ、ほら、入場だって」
春樹、音楽が鳴り出したのを確認すると私の手をとった。
―…やん…春樹の手って大きくて…ドキドキしちゃうー
春樹の手の温もりを感じながら入場門をくぐった。その時。
「ほーんーだー!!お前は列が違うだろがーー!!」
耳が痛いほどマイクの音割れが響いた。…南原だ。
キーンと嫌な音が残る中、私と春樹は注目を集める。
「あーあいつだろ、あのカマ」
「セーラー着てくるきもいやついるじゃん」
ざわつきに混ざって聞こえる声…
―………
「ごめんね春樹…」
私、そう言って春樹の手を離そうとした…
―え……
春樹は…私の手を強く握ってくれたのだ。
「は…春樹?…」
戸惑う私に春樹は、いつもの真剣な顔でさらりと言う。
「堂々としてろよ。お前かわいいし、ブスな女がひがんでんだよ」
「……うん……」
―春樹…
嬉しくて、私も春樹の手をきゅっと握り返した。


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