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『本当の自分……』
【少年/少女 恋愛小説】

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『本当の自分……』-3

魅也……
中学のときの俺の彼女だ。くるくると表情が変わる、アイツの顔を見てるのが俺は好きだった。あの日、勇気を出して告ったとき、頬を赤らめて頷いてくれた魅也……

嬉しくて嬉しくて、その夜は眠れなかった。幼い恋心……ずっとずっと一緒に居ようって俺達は約束した。だけど、何も言わずに俺は引越してしまった。理由なんて言える訳がなかったから……。

恨んでいるだろうか?
憎んでいるだろうか?

そんなアイツに弥生は似ていたんだ……。袖口で涙を拭い、俺はアルバムを閉じた。

「明日、ちゃんと謝らなきゃな…」


翌日、気が重かったけど学校で弥生に話し掛けてみると、

「ううん、気にしないで。アノ日だったんでしょう?」

そう言って弥生は笑った。アノ日?何かとんでもない誤解を招いてるみたいだけど、弥生の表情は明るかったから、俺は少しだけホッとした。

「あ、でも一つだけお願いあるんだけど…いい?」

弥生は突然、そんなコトを言い出す。

「ああ…何?」
「今度の休み、買い物に付き合って欲しいんだけど……」

本当は断ろうと思ったけど、仕方ないから俺は首を縦に振った。今にして思えば断れば良かったんだけど、その時はあんなコトが起きるとは思っても見なかった。

「ホント?じゃあ約束よ!詳しいコトは夜に電話するから!」

たかが買い物に付き合うだけで、なんて嬉しそうな顔するんだろ。まぁ機嫌が直ってくれたなら、それでいいか……。そんなコトを思いながら、久しぶりに俺は少しだけ笑った。


「と、泊まりがけぇ!!?本気かよ?」

携帯を握り締めて俺は思わず叫んでしまった。確かに、買い物に付き合う約束はしたけど、泊まりがけって何だよ?唖然とする俺をよそに弥生は楽しげに話を続ける。

「うん!東京にね、従姉妹(いとこ)が住んでるの。由佳の話ししてたら、連れておいでって……。ああ、楽しみだなぁ。」
「ち、ちょっと待ってくれよ。泊まりなんて……」
「だって由佳、約束してくれたじゃない。もう、二人で行くって言っちゃったもん。」

『言っちゃったもん』じゃねーよ!大体なんで、買い物するのに泊まりがけなんだよ?

「でね、待ち合わせの時間なんだけどぉ…」

「………」

「朝8時に、駅前でいい?」

「………」

俺が女の子と泊まりがけ?まずいだろ、やっぱ……。確かに今は女同士だけどさ…でも…。

「由佳!聞いてる?」

返事が無い俺に、焦れたのか、電話の向こうからボリュームを上げた弥生の声が響いた。俺が慌てて返事をすると、『明日、待ってるから……』と言い残して電話は切れた。弥生が電話を切った後も、しばらく携帯を持ったまま俺は立ちすくんでいた。

翌朝、小さめのボストンを肩に掛けて俺は駅で弥生を待っていた。

東京…かぁ……。

実際、何度も行く機会はあった。だけど、あれ以来足を向ける気にならなかった場所……。そこへ行くという事に俺の気持ちは重かった。

「由佳ぁ…お待たせ!」

遠くから楽しそうにはしゃぎながら、弥生が駆け寄ってくる。ぴったりとした黒いスリムのデニムに紫色のキャミ、ピンクのパーカーを羽織って、ニコニコと笑っていた。

「待ってねーよ。まだ8時前だぜ?」

子供みたいにはしゃぐ弥生を見ながら、俺は小さく笑う。

「あ!由佳が笑った。あたし初めて見た。やっぱり、無理矢理だったけど誘って良かったぁ!!」

どこが嬉しいのか分からないけど、そんな俺の仕種に弥生は満面の笑みになっていた。

それから東京まで約2時間、車中で弥生はずっと喋っていた。今日は晴れてて、よかったね。などと天気の話しから始まり、従姉妹のコトや行ってみたい店のコトなど、機関銃のように弥生は話す。そんな、取り留めのない話をしている内に、いつのまにか電車は東京に着いた。


「圭子お姉さん、お久しぶり!」

案内されて辿り着いたマンションで、俺達を出迎えた女性に弥生は、そう挨拶して笑った。

「よく来たわね弥生。あなたが由佳ちゃんね?はじめまして、二階堂圭子(にかいどうけいこ)っていいます。よろしくね。」
「あ、俺…わたし、功刀由佳っていいます。突然お邪魔してすみません。」

眼鏡の奥のぱっちりした瞳と、綺麗で長い黒髪が印章的な彼女に、そう言われて俺はドキッとする。そういえば、塾の講師をしてたんだっけ?こんな先生だったら、俺も真面目に勉強するんだけどなぁ……。などと考えて、呆けている俺を見て彼女はクスクスと笑った。

「さあどうぞ、コーヒーでも入れるわね。」

彼女に言われてリビングに通されると、程なくしてコーヒーをトレイに乗せて彼女が戻ってきた。


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