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『本当の自分……』
【少年/少女 恋愛小説】

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『本当の自分……』-2

俺の家は俺のせいで、壊れてしまった……。

事あるごとに母を罵倒する父。

怯えたように俺の機嫌を伺う母……。

分かっていても、どうするコトも出来ない俺……

ベッドに倒れ込み、何気なく床に目をやると落ちた本の中に紛れて、アルバムが目についた。拾い上げてパラパラとめくる。そこには小学生の俺がいた。真っ黒に日焼けして、半ズボンで笑いながらピースなんてしている。ヘルメットを被り、バットを構えた写真もあった。そしてページを進める俺……。

桜の木の下で、母親と並んで満足げな顔で写ってる写真が目についた……入学式だ。
あの時は自分が少しだけ大人になった気がしていた。そう、今でも覚えてるあの[学生服]を……。

ポタッ……

アルバムに雫が落ちた。


俺が自分の身体がおかしいと感じ始めたのは二年生になった時だった。いつまでたっても声変わりしない自分……。鏡に映してみても喉仏のかけらも見えない。
そしてあろう事か、俺の胸は膨らみ始め、身体は女性特有の丸みを帯びて来た。俺は自分の身体の異変に戸惑い、母親を伴って病院に行った。そして、俺を診察した医師の言葉に驚愕する。

「半陰陽……極めて特殊な例ですな。」

半陰陽……つまり、俺は元々、女として産まれる筈だった。それがどういう訳か男の身体で産まれてしまった。そして、第二次成長期に入ると、俺の身体は本来の姿へと変貌を遂げ始める。

納得なんか出来る訳がなかった。そんな言葉で俺の性別を変えないでくれ!!そう叫んだ。

俺は荒れた。自分を……そして、こんな身体に産んだ親を呪うように荒れた……。その時以来、母親は俺を腫れ物を扱うみたいに接する。

だけど、中三になる頃には身体の変化は隠せなくなり、クラスの連中の中傷に耐えられなくなった俺は学校を休むようになった。
それを機に両親のいさかいが始まる。

父は言った。

「なんで普通の子を産んでくれなかったんだ!!」

言葉を返せず、ただただ泣く母……

その場にいるのがいたたまれなかった……。逃げるように部屋に引き篭っても、両親の声は嫌でも響く。
そして夏が終わり、秋が近付く頃に入浴を終えた俺は姿身の中に他人を見た。

誰だ?コイツは……

分かりきっている筈なのに、心は認めたがらない。
鏡に映っているのは完璧な女性の姿……そして、突き付けられる現実。

声を殺して俺は泣いた。

父に気付かれないように……、
母を悲しませないように……

「さよなら……俺…」

震える唇が言葉を紡いだ。そして、認めなければならなかった……

由佳(よしき)は、もういないのだと……。


高校受験を境に、俺は性別を変え、名前も[ヨシキ]から[ユカ]に変えた。髪を伸ばし、着慣れない女性用下着とも格闘した。

両親も俺を気遣い、合格と同時に引越しをしてくれる。しかし、本当の理由は自分達の世間体の為……。わかっていたけど、そう思うコトにした。

そして入学式……。スカート姿という屈辱的な恰好で俺は迎えた。その頃になると俺の身体からは筋肉がすっかり削げ落ち、ウエストはくびれ、不必要なまでに胸が膨らんでいた。元々、整った顔立ちをしていた俺は、どこから見ても女性そのものに見えていたのだろう。
これで黙って微笑んでいれば、それなりに可愛かったのかも知れない…。だけど、俺は女らしい振る舞いなど微塵もせず、言葉遣いすら変えなかった。

それだけが俺に許された、たった一つの抵抗だったから……。

そんなコトをしていた俺は当然のように、たちまちクラスで異質な存在となり、孤立して行く。しかし、それでもいいと俺は思っていた。何故なら、誰にも干渉されたくなかったから。そして、次第に全てに興味を失って虚無的になっていく俺。

男と付き合うなんて考えられない……

女と付き合う訳にはいかない……

俺は一体、男?女?


「ねぇ功刀さんって、どうしていつも怒った顔してるの?」

そんな俺に話し掛けてくる奴がいた。それが弥生だった。
ちっちゃくて可愛くてよく笑う、どこにでもいるような女の子。俺が俺のままだったら、惚れてたかも知れない…そんな女の子だった。
人懐っこい彼女は、すぐに俺を名前で呼ぶようになる。名前で呼ばれるのは嫌だったけど、慣れる為に我慢した。それはきっと、彼女だから我慢出来たんだと俺は思う。

なによりアイツに似てたから…そう、魅也(みや)に似てたんだ……。


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