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太樹と紀久
【同性愛♂ 官能小説】

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太樹と紀久-3

 「きのうはありがとうございました。おいしかったです」
 サッカー部の練習を終えて引き揚げようとしていたとき、太樹は吹奏楽部の一年生、紀久に声を掛けられた。きのうあの後、二人で一緒に買い物に行き、太樹は紀久に手料理をご馳走してやった。太樹の家は父子家庭で、いつも太樹が食事の支度をする。ニコニコ顔の紀久が、料理の礼を述べているのは明らかだったが、太樹は彼 の口の中にぶちまけた自分の粘っこい体液を「おいしかった」と言われた気がして、柄にもなく赤面した。
 練習中も、ふと紀久がサックスを咥えて練習しているのが目に入っただけで、昨日の記憶がまざまざと甦り、前を膨らませて、部の連中にさんざんからかわれた。紀久は音楽に入り込むタイプのようで、吹きながら盛んに上体を前後に動かしている。それが太樹の妄想を一層掻き立てた。
 「きょうは修也は?」
 「バイトで、もう帰られました」
 紀久の丁寧な言葉遣いが感じよかった。
 「修也と仲いいんだ」
 「んー…でも…」
 なぜか言葉を濁す。
 「でも何?」
 「シューさん、しょっちゅうお尻触ってくるし」
 「えっ…」
 「油断してると前ももんでくるし」
 そう言って迷惑そうに眉を寄せる。太樹は昼休みの修也との会話を思い出して、ニヤリとした。
 昼休み、食堂で太樹を見つけた修也は、開口一番、
 「抜けた?」
 と聞いてきた。きのう太樹の家に置いてきた「男子校の新任女教師」の感想を聞いているのだ。
 「抜けた」と太樹。
 「キクは? 抜いてた?」
 「いや。結局、脱ぎもしなかった」
 そう聞くと修也は残念そうな、ほっとしたような、複雑な表情を見せた。
 「なかなか堅いな、あいつ。かわいい顔してるから、脱がして、見てやろうと思ったのに」
 それで紀久を連れてうちに来たのか。太樹には、修也の魂胆がおかしかった。
 「しっかり握り締めてたじゃん」
 からかうと、
 「あいつ多分、じかに触られたことないしな。初握りは俺のもんだ。次は初搾りだな」と、ばかなことを言ってうれしそうだ。
 抜きはしてなかったけど、俺のをしゃぶってたぜ。しかも飲んじゃったし。言ってしまいそうになるのを太樹はこらえた。またやってくれる?と聞く太樹に、ほかの人に秘密にしてくれるなら、と紀久が約束したからだ。
 暑い日で、日陰とはいえ屋外でサックスの練習をしていた紀久は汗だくになっている。もちろん太樹も汗だくだ。太樹は、紀久をシャワーに誘った。
 「でも、タオル持ってませんから」
 「貸してやる」
 太樹が先に歩き出すと、紀久は一瞬ためらって小走りに追いかけた。
 「太樹さんが練習してるの、見てましたよ」
 「そうなの?」
 自分も紀久を見たとは言わない。
 「やっぱり太樹さんが一番かっこいい」
 こういうことを、すっと言える紀久の素直さに太樹は感動した。
 「そうだろ」。冗談めかして言うと、太樹は紀久の肩に手を回した。
 脱衣室で裸になると、太樹は紀久が脱ぐのを待った。意を決した紀久がボタンを外し始める。最後の下着を取り去り、中のものがあらわになった。修也より先に見てやったぞ。太樹は思った。 太樹が貸してやると言ったタオルは、一枚しかなかった。しかもそれは太樹の左肩に無造作にかけられている。太樹が腰に手を当 て、
見せ付けるようにしてシャワー室に入っていく隣で、紀久は両手で前を隠していた。
 シャワー室は、練習を終えた運動部員たちでいっぱいだった。仲間同士話す声やふざけあう声でにぎやかだ。特段、二人に注意を払う者はいない。紀久は太樹のまねをして、上を向いて目をつむり、顔にじかに水を当てた。体を伝って流れる水が気持ちいい。
 しばらくそうしていると、紀久は尻を、割れ目を指でなぞるように触られた。しっかりと意識的な手の動きだ。紀久はびっくりして、顔をぬぐった。太樹の方を見るが、まだ目をつむって顔に水を当て続けている。修也がよくズボンの上からそんな触り方をするので、ひょっとして修也がいるのかと思って見回したが、周り は知らない顔ばかりだ。
 すると今度は、後ろから両方の胸の突起を触られた。びくっとして振り向こうとすると、太樹に抱きすくめられた。


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