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陽だまりの詩
【純愛 恋愛小説】

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陽だまりの詩 6-6

***

俺は昔よく訪れていた居酒屋へと入った。
店内は相変わらず閑散としているが、俺はこの物静かな空間が好きだった。

「よー、ハル」
入店早々、店主の親父っさんが気さくに話しかけてくる。
「お久しぶりです」
「本当だぁ、全く来なくなりやがって」
「すいません、家のことが忙しくて」
「そうだったなぁ、妹さんはどうだぃ!」
「相変わらずです」
「そうかぃ、頑張れよぅ!」
親父っさんはカッカッカと笑う。
「はい」

俺は一時期、週三くらいのペースでこの店に通っていた。
客入りの少ない店だから、俺はすぐに顔を覚えられ、親父っさんとは色々な話をした。
俺も本当の親父のように慕って、よく相談もしていた。

最近は美沙の入院が頻繁になったり、仕事も忙しくなったため訪れることはめっきり減っていた。

まあ、もう一つ来なくなった大きな理由があるのだけど。


「アキちゃん待ってるぞ」
「はい」

俺は昔よく座っていた奥のテーブルへと向かう。
そこには、これまた久しぶりに見る顔があった。


電話の主である、水瀬秋江(みなせ あきえ)だった。


「ハル、久しぶり。」
「久しぶり、アキ」
俺はアキの向かいに座る。
「なに飲む?」
「生」
「親父っさん、生ね」
親父っさんは、あいよぅ、と声を荒げた。
「仕事帰り?」
俺はなんとなく、再びスーツを着て家を出ていた。
昔はいつもスーツで来ていたからかもしれない。
「まあ。美沙のところに寄ったけど」
「そっか、美沙ちゃんは?」
「相変わらず。最近反抗期だけど」
「ふふ、年頃だもんね」
そこに親父っさんがジョッキを持って現れた。
「ほれ生、一杯目は俺のおごりだ」
「いいんすか?潰れちゃいますよ?」
「ばかやろぉ、俺の目が黒い内は、この店が潰れることはねぇ」
「そっすか、じゃあごちになります」
俺はグイッとビールを流し込む。
「……お前さんたち、寄り戻したのか?」
親父っさんの言葉にビールを飲む手が止まる。
「いや?突然アキに呼び出されたんです」
「そうそう、久しぶりに顔見ようかなって」
「そうかぃ、なんか昔に戻ったみたいだなぁ」
「そうですね」
親父っさんは笑いながら立ち去る。


そう。アキは俺の元彼女。
今まで付き合った女性の中で一番長く交際し、結婚も考えたこともあった。


ここは俺とアキの出会いの場所であり、当時の思い出が沢山詰まった場所だ。

そしてアキと別れたことが、この場所に足を運ばなくなった最大の要因でもあった。


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