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燦然世界を彩る愛
【純愛 恋愛小説】

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燦然世界を彩る愛-5

「あぁー…なんか、こーゆー感じって…」
大きく息を吸い両手を広げると、
「すっげー青春っぽいです!青春どストライクです!」
叫び、暗空を受け止めた。
そこで僕は気付いたのだ。
きらりと、一際輝く星があることに。
僕の目に映る、杉坂がいるこの世界が―――。
僕は彼女に歩み寄り、その華奢な体を抱き締めた。
ちいさな、ちいさな、存在。
僕も彼女も何も言わなかった。
この燦然世界には、僕たち二人しかいなかった。
壮麗で、美麗で、煌めいて、輝いて、きらきらとした世界に、僕らは二人ぼっちだった。
「痛いのは嫌だから、優しくしてくださいね」
「初めてだからうまくいかないかもしんねーぞ」
「初めてじゃなかったらびっくりですよ」
あはは、と杉坂が笑う。
「そうだな。そうしたら俺、前科持ちだったってことになっちゃうもんな」
僕も、笑う。
これから行う行為は非常にシンプルだ。ただ、両腕を思いきり前に突き出せばいい。
「私とワタシが終わるのを見ててください。それが、私を守れなかったせんぱいの罰ゲームです」
舌をペロっと出して、あかんべぇをした。
その笑顔はすべてを欺き、彼女の生を支えてきたのだ。
僕の腕から離れると、杉坂は二、三歩程後退した。
抱いていた温もりが、消える。
僕はぽっかりと空いたその隙間を埋めるために手を伸ばした。
けれど、掴めたのは虚空だった。
あー、せんぱい?
困ったように笑って、彼女の唇が言葉を紡いだ。

「せんぱいのこと、大好きでした」



この話はもうそろそろ終わる。語り手である僕の意識が途絶えるからだ。
見下ろした光景は、しっかりと、彼女の望んでいたものだった。
「―――」
込み上がる吐き気。嘔吐感。視界が揺らぐ。
逃げんなよ。正視しろ。直視しろ。受け入れるんだ。網膜にしっかりと焼きつけるように、視神経に刷りこませるように。
僕はしっかりと『それ』を認知しなければならないのだから。
喉がひどく渇いていた。呼吸がうまくできない。
唐突に、僕は愛を叫びたくなった。
どこから叫ぼうか?それは僕らに相応しい場所がいいと思う。
世界の中心なんかじゃなく、僕は一番はじっこから愛を叫ぼう。その愛が君に届くように。君だけに届くように。
か細く空気を振動させたその言葉の陳腐さに、笑いが込み上げてきた。
そこで僕は気付いてしまったのだ。
世界が―――色褪せたことに。
けれど、愛だ。
愛なんだ。
一歩。
守ってくれますか?
二歩。
また、明日です
三歩。
せんぱいのこと、大好きでした
四歩目は、ふわりと浮いた。
あぁ、そう言えば彼女に伝え忘れていたことがあった。

杉坂、僕もお前のことが―――


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