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水面に浮かぶ紅い花びら
【少年/少女 恋愛小説】

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水面に浮かぶ紅い花びら-2

僕は君の片割れ。

少女の耳元で少年は低く穏やかな声でそう囁いた。少年が蔓を解き放った時、少女の目の奥には見た事もない程澄んだ光が宿る。少年は少女の顔を覗き込み、それを認めると優しく微笑んだ。

君は僕の片割れ。

もう一度、今度は彼女の目の奥を見つめてやはり穏やかに囁いた。
探したんだ。君が消えてしまった時から僕の時間は止まったままだよ。約束したのにな。だから君はここで数を紡いでいたんだろう?


少女の目からゆっくりと涙が落ちる。少女の涙がポタポタと水面に落ちるとあの名も亡き紅の花びらになっていた。
隠し続け、気がつかないふりをしてきたモノが少女に鋭い刃を向けては、少女の足下で落ちていく。
もう君は孤独じゃないよ。


こんなにも綺麗な血を流し続けていた彼女。傷つけ、重たいものを背負わしていた自分を少年は呪った。
だが、それももうおしまい。
少年は自分が解き放った蔓をもう一度少女に巻き付けはじめる。
少女の目の奥の光が弱くなり、揺らぐ。
それから少年はおびえる少女をじっと見つめると静かに、少女に巻き付けた蔓の続きを自分にも巻き付ける。少女はハッと目を見開き、少年の目を見上げた。少年は穏やかに笑い、蔓の中で彼女の額にひとつだけ口付けを落とす。
今度は離れない、絶対に。こうすれば、ひとつになれるだろう?
少年のこれまでにないほど真摯な目と言葉が少女を射抜く。
うん。
少女は数を紡ぐ事をやめた。もう紡ぐ必要はないのだから。

つま先まで巻き付けられた蔓の中で少年は少女を優しく、強く強く抱き締めながらじぶんの腕の中の少女を愛しく想い続けた。水面に浮かんだ紅く悲しい花びらがふわりと宙に舞い、水に佇む蔓の中の二人を優しく撫でていく。

二人は蔓の中抱き合ったまま水面に身を横たえ微笑みあうと静かに目を閉じた。
少年の腕の中、胸の奥で鼓動にあわせるかの様に、あのオルゴールが旋律を刻んでいる。
これであなたたちもサミシクはないんだね。
その言葉は確かに二人にも響いていた。いや、もう二人なんかじゃない。一つになったのだから。

数を紡ぐ事をやめ、探し終えた二人は眠りにつく。ハラハラと何かが崩れはじめた。水面には、波が立ちはじめる。紅い花びらは消えていた。
それでもオルゴールは美しく響き続ける。この崩壊の世界に。永遠という時間を旅する者だから。

そう。これは世界の崩壊の音。その中で一つになった少年と少女は眠り続ける。
いつまでも。ね?


FIN


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