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『one's second love』
【初恋 恋愛小説】

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『one's second love〜桜便り〜』-9

…俺は絶句した。そんな爆弾発言をサラリと言ってのけてしまうナツコさんに。
「は?だって、当時まだアンタ…」
「うん。高校生だった」
問題ありすぎだろ。そりゃ…。
「もちろん周囲の反応は良くなかったよ。学校はおろか、親まで大反対。
私はまだ幼くて、体だけ大人になっただけなんだって……思い知らされた」
絶望したナツコさんの目が沈む。
建前とか、世間体とか、そんな見えない圧力に打ちのめされた彼女の可能性が、酷く脆いもののように見えた気がした。
「相馬くんは、産んでいいよって、言ってくれた。
二人の間に生まれた命なら、二人で責任を持って育てていこうって」
「でも、それって…」
許されない。許されるはずもない。
たとえ本人たちが認知しても、祝福されない命は悲しいだけだ。
まともに考えれば、答えは最初から一つしかなかった。
「決めたのは、私の方。十七にしては、それなりに考えて出した結論だと思うわ」
「…………」
「彼の言葉を信じなかった訳じゃないの。覚悟だって決めたはずなのに。
でも、いざ改めてスコープ越しに、私のお腹のなかでちっちゃく動き回ってるそれを見たときに………

すごく、怖くなったの」

ナツコさんは大きく首を振った。嫌々をするような仕草をした。
「初めて見る赤ちゃんの姿に、やっと実感が沸いてきたの。
これが、私の子?ホントに、大丈夫なの。私みたいな奴に、この子の母親が務まるんだろうか。自分より大切なモノって、思える日がやって来るんだろうか。
この子はちゃんと……幸せになれるんだろうか…

そうやって、まだ形でしかない不安が現実になって。全部真っ白になって。
すぐに先生に言って、堕ろしてもらった。
相談すらしなかった。
あの人は……私を責めなかった」
それからしばらくして、二人の進路が決まり、ナツコさんは逃げるようにこの町へやって来たという。
冷たい視線と、押し潰されそうな罪悪感にかられて。
「勘当同然で家を出た身だったから、最初はすごい苦労した。バイトと学生生活を両立するだけで頭が一杯だった。でもそのおかげで、辛いことだって忘れることができたのよ」
晴れ晴れとした顔でナツコさんは言う。そうして、またいつもと変わらない穏やかな表情へと戻っていく。俺の知っているナツコさん。
でもそれは、彼女の隠し持っている本当の素顔に気付いてしまった後では、もはや何の意味もない。
「相馬さんとは…それから?」
「連絡すら、とってない。当たり前だけどね」
「もう、会いたくないの?」
ナツコさんの顔が一瞬引きつって。
首を縦に振った。
震わせた唇を噛み締めながら。


嘘だ……
俺には分かる。
彼女の願いが。押さえ込んだ思いが溢れて、形として現れていることを。
ナツコさんがたった一人で生きるために選んだ方法の中に、それはある。

この店の、名前として。

――『Again』

それは、再会を願う言葉……


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