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『one's second love』
【初恋 恋愛小説】

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『one's second love〜桜便り〜』-5

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要の部屋に篭って数時間。結局、散々探し回って掻き集めた証拠物品は僅かなものだった。
「…写真、あるにはあったんだけどなぁ」
去年の平成××年度卒業記念アルバムをペラペラとめくりながら、私はそんな事をいった。
そう、半日近くかけて、わざわざ綺麗に片付けてやりながら、得た物はたったこれだけ。
小・中・高と続いた要の卒アルが全ての収穫だった。しかも最後のにいたっては私も持ってるから見ても意味がない。
「本当に、これだけ?アイツ写真撮らなさすぎじゃない!?」
「う〜ん、まさかここまで見事に残ってないとは俺も思わなんだ」
自分よりは確実にすっきりした要の部屋を見回して、兄貴が唸った。当初の予定を思いっきり外して、途方にくれる私達……
「どうしよう?このままじゃ…」
集合写真に映った、要の顔を指でさする。
面倒くさがりの仏帳面をレンズに向けて、そこからつかず離れずの位置であからさまに無愛想な私。
この頃はまだそんなに離れていなかった距離も、今では決定的なくらい深い溝が出来て。
――まあ、掘ったのは私の方だけど……

「心配すんな、岬。俺に秘策がある」
「へ?」
自信満々に立ち上がり、そう言うと兄貴は窓際の押し入れを強引に開けた。
「えっ?ちょっと待ってよ、そこは…」
ついさっき、あまりにも汚すぎて捜索を断念した場所。
次の瞬間、ドサドサと山のように落ちてきた物に押し潰されたウチの兄貴が悲鳴をあげた。
「あ〜あ、せっかく片付けたのにぃ」
私は近くに転がっていたノートを拾いあげると埃をはたいて、そこで、初めて気付いた。
その、山になって兄貴を視界から消しているいるものが、全部、一冊のノートだったことに。
「なに…コレ?」
体に覆い被さる大量の謎の本を払い除けて、兄貴を助け出す。
「何よこれ?」
「日記だよ、日記。手記とも言う…」
腰をさすりながら、話の腰を折ろうとする。
「なんでアンタが知ってんのかって話!!」
「学校の手荷物検査で引っ掛かった時に、チラッとな。アイツ、煙草を隠すのに必死で鞄の中身はノーマークだったのさ」
ニヤニヤとほくそ笑む兄貴は、万引きGメン…とまではいかない武勇伝をこれみよがしに熱く語った。
「あんまりにも慌ててたからよ、面白くなって色々尋問したんだ」
「悪趣味」
横暴な教師のパワハラを一方的に受けたであろう要に、私は心底同情した。
身内の不条理は誠に申し訳ないと思ったけど。
でも、もしかしたらこれは。
この古ぼけた、何の変哲もない一冊のノートが。
「十年前から書き留めてるって言ってた。
だからたぶん、お前のことも、載ってる……」

私にとって、最終兵器になる可能性を秘めていた。


?


「本当に、知らないんだな?」
妙に重苦しい声が、小さな店内に響きわたる。ちょうど五分前に私用から戻ってきたこの店の主は、今はカウンター席にどっかりと座る俺の前で、居心地の悪そうな顔を素っぽに向けていた。
「相馬崇史。23歳。AB型。趣味は読書。大学を首席で卒業後、現在は司法試験の勉強の真っ最中……」
「さあ、誰かしらね」
まだシラを切り通すつもりなのか、ナツコさんの表情は動かない。せっかく俺が本人から掘り下げに下げた情報を徹底的に無意味にしようとする。
だけど、いつも大人の余裕をかますこの人も、今日はらしくない。
実際、相馬さんの名前を出したとき、微かに眉がつり上がり動揺しているのを俺は見逃さなかった。


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