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『鵺』
【鬼畜 官能小説】

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『鵺』-9

「お疲れさまです」

メルセデスを操る運転手が伸治に声を掛けた。
いかつい顔立ちに頬の傷。鋭い眼光にがっちりとした体躯。
いかにも〈その筋〉の人間と分かるいでたち。

伸治は運転手に尋ねた。

「皆んな揃ってるのか?」

「はい。若で最後です」

伸治は苦笑いを浮かべる。

「辰。その〈若〉は止めてくれ」

「すいません…」

〈辰〉と呼ばれた運転手は、緊張した面持ちで頭を下げた。

やがてメルセデスは、あるビルの前で停まった。
こじんまりとしたビルは辺りの景観とマッチしており、とても暴〇団の事務所とは思えない佇まいだった。

辰は慌てて運転席から降りると、後部ドアーを開いた。ゆっくりと伸治が降り立つ。
辰の後を歩きながら、開かれた玄関ドアーを伸治は潜った。
その面前には20人ほど、辰と同様のいでたちをした屈強そうな男達が、身を屈めて伸治を出迎えた。

「じゃあ始めるか」

伸治は数人のいかつい連中を引き連れ、ビルの最上階にある会議室へと向かった。

壇上に立つ伸治の声が響く。

「昨日、チェチェニアに拠点を持つカミンスキー・ファミリーのナンバー2、ガマル・セメンコフと、取引の最終打ち合わせを行った。その結果、今週末に取引を実施する。ついては、これからオレの言う事を各人頭に叩き込んでもらいたい。メモは一切残すな」

伸治はそこで言葉を切り、周りを見渡した。面前に座る者達は、皆、神妙な面持ちで食い入るように彼を見つめていた。

「では、取引の全貌を伝える」

そう言った伸治は約30分に渡り、取引のディテールについて説明する。男達は、誰ひとり言葉を発せず話に聞き入っている。

「……以上が取引の全貌だ」

説明を終えた伸治は男達を見回した。誰ひとり彼から視線を外す者はいない。

彼は満足気に頷くと、言葉を続けた。

「次に進捗状況だが……」

会議室に彼の声だけが響いていた。





眩ゆいばかりに輝く原色のディスプレイ。その間を縫うように行き交う人の群れ。
センチュリー・ホテルの最上階のスイートルームで。眼下の景色を眺めるふたつの人影。

ひとりは伸治。
もうひとりはガマル・セメンコフ。

伸治はコーヒー。ガマルはヘネシーのXOで夕食後のひと時を過ごしていた。

2杯目のヘネシーを傾けながら、ガマルが尋ねる。


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