『鵺』-2
「…あ…あ…やぁ…」
狼狽の色を見せる理沙。
伸治は構わず身を寄せ、唇を重ねる。
「…ん…」
理沙は目を見開き唇を固く結ぶ。伸治の二の腕を掴み、あらん限りの力で撥ね除けようとした。
しかし、女の力ではビクともしなかった。
伸治の掌が、さらに乳房を強く潰す。
「…！いっ」
痛みに思わず声を漏らした理沙。
その途端にヌルリとした感触が口腔を襲った。伸治が舌を這わせる。
「…う…ん…ん…」
顔をしかめ、嫌悪を露にする。
引き剥がそうと何度も身体を押すが、その腕さえも伸治に掴まれた。
舌は執拗に理沙の口腔を責めたて、やがて唾液の絡む音が耳に聞こえた。
じゅる…くちゅ…くちゅ
(…もう、やめて…やめて…)
頭の芯が痺れゆく理沙。伸治への嫌悪感は揺らいでいき、掴む指から力が抜けていく。
吐息が漏れる。
伸治の手が、セーラー服の裾から中に滑り込む。
「…ふっ…ん…」
内腿が開き、捩込まれた足が理沙の恥丘を刺激する。
「…うん…ん…」
理沙の中で肉欲が頭をもたげる。
全身から力が抜けた。
その瞬間だ。
伸治の身体が理沙から離れる。
(…えっ…？)
思考力が働かず、反応が鈍る。
伸治は離れた位置から理沙を眺めていた。
理沙は遅れてハンカチを取り出し、唾液まみれの口許を拭うと伸治を睨み付ける。
「…何…すんのよ…」
その声は細く、震えていた。
伸治はヒラリと屋上に舞い降りて嘲るような目で理沙を見つめて言った。
「別に。アンタがもの欲しそうな目をしてたからさ」
そして理沙から背を向けた。
「ば、バカじゃないの！アンタ…アンタこそ童貞のくせに恰好つけてるだけでしょうがぁ！」
ヒステリックな叫びが屋上の春風に拡散する。伸治は振り向くこと無く出口へと消えていった。
理沙はしばらく、その場に立ち尽くしていた。