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捨て猫
【コメディ 恋愛小説】

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捨て猫-5

「ユキ」
「ゆ、き?」
猫耳娘、いやユキは、俺の言葉を反芻する。
雪のように白い肌、だからユキとあまりに短絡的なネーミングだが、少なくとも数字
よりは百倍マシだろう。
と自負しているが、果たして受け入れてもらえるだろうか。
「ユキ、ユキ、ユキ……」
繰り返し、繰り返し、味わうように、俺の名づけた名前を呟く。
瞬間、ユキの顔が綻んだ。
花の咲いたような、その屈託のない微笑みから俺は察した。
気に入ってくれたんだ、と。
「気に入ってくれたみたいだね」
が、その一言で、呆気なく微笑みは消えた。
まるで、桜の花をショットガンで撃ち抜いたかのような感じに。
「べ、別に気に入ってないわよ。ただ、数字よりはマシだと思っただけよ」
そして、またいつも通りの怒った調子で言った。
なるほど、ユキはこういう性格なのだ。
いわゆる、素直になれない症候群……ツンデレ。
「だから、しょうがないからユキって、呼ばせてあげる」
「はいはい」
苦笑いで、ユキの言葉を流しながら立ち上げたパソコンの電源を落とした。
なんだか、久しぶりに心に風が入り込んだみたいだ。



「ブリーフからトランクスに変えたらさぁ。小便した後、ちゃんと水切らなかったせ
いか、隙間からこうっ……」
椅子の前足を上げながら、紙パックに入ったオレンジジュースを握り締め、トシは
言った。
「黙れ」
短く、角が立たない程度に俺は強く言った。。
昼食の時間に限って、トシはとびきり下品な話をし出す。
「食事中だぞ。ったく、緑茶がマズくなったよ」
そう言いつつも、俺はペットボトルに僅かに残った緑茶を飲み干す。
市販の緑茶は緑というより黄色に近い。
それこそ、ラベルを取ったら飲みたくなくなるほどに、尿に近い色をしている。
「小便も緑茶も変わんないって、小便普通に飲んでるヤツみたことあるぞ」
「どこで?」
「AVで」
そんな馬鹿な答えに、半分本気で呆れ顔を作る。
トシと付き合ってると、これはわざとボケてるのか、それとも素なのかときどきわか
らなくなる。
ボケてるヤツは、結局そのネタバラしをしないわけだから、いつまで立っても疑問が
解決する事はない。
だからといって、それがむずかゆいとか、気が晴れないとか、そんな事はないのだけ
れど。
「そっか、じゃ飲んでこいよ。そうだな……唯あたりに飲ませてくれって、頼んでこ
い」
「おう!」
と、意気込んで、トシは教室の一番前の席でボオッとしている唯の下へと走ってい
く。
田辺唯は、小学生からの俺らの幼なじみだ。
だから、トシの冗談の範囲も考えもだいたいわかっている。
こういうのを以心伝心っていうんだっけ?考えが、言葉も無く伝わる。
実はこれって結構すごい気もする。
トシが唯の前の席に腰を下ろす、そしていかにも重大な事を話すかのような面もちで
口を開いた。
この距離じゃ話してる内容はまったく聞こえないが、しきりに頷く唯の姿からして、
壮大な前置きを話しているのだろう。
こういう時、トシは何故か慎重だ。
学校の成績は、進級会議の常連だが、ポテンシャルは意外に高いのかもしれない。
案の定、唯がショートカットの髪を翻しながら立ち上がる。


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