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『傾城のごとく』
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『傾城のごとくU』中編-1

「ただいま〜」

自宅の玄関を開けながら私は告げる。すると、居間の方からチコがトコトコと歩いて来た。
玄関マットの上にちょこんと座り〈ナァォ〜ン〉と鳴く様は、きっと出迎えのつもりなのだろう。

「チコ、ただいま!誰も居ないみたいね」

私はそう言いながら、チコのアゴの下を撫でる。チコは〈ゴロゴロ〉と喉を鳴らして、手の甲に顔を擦り寄せてきた。
ひとしきり撫でてやると、玄関を上がって居間へ向かった。チコは足に絡み付きながらついて来る。

居間は片づけられ、人の気配がしない。母はずいぶん前に出掛けたのだろう。
台所に置いているチコの餌入れを覗いて見ると、ドライフードを入れる餌入れは空で水を入れる器も、わずかに残っているだけだった。

チコが来て3ヶ月。

半月前からチコの食事を離乳食からドライフードに切替えた。
最初は食べてくれるか心配だったけど、選んだ物が合ってたのか好き嫌いが無いのか分らないが、チコは苦もなく食べてくれた。

「お腹空いたネ〜!ちょっと待っててね」

ドライフードの袋を開ける。袋が開いた音を聞いたチコは、スイッチでも入ったように駆け寄り、袋の中に頭を突っ込んできた。

「ア〜ッ!待って、待って」

チコの頭を押さえてドライフードを餌入れに入れてやる。チコは最初〈フンフン〉と鼻を鳴らしていたけど、やがてひと粒口にくわえて〈カリカリ〉と音を立てて食べ始めた。

チコはゴハンに夢中だ。
私は水を入れ替えて餌入れのとなりにそっと置いた。チコは水が置かれるたのを目で追うが、食べるのを止めようとしない。

その仕草を私はしゃがみ込んで眺める。ずっと見ていたい光景。

やがて、食べるのを止めると水を飲みだした。ドライフードを慌てて食べたせいだ。

チコは水を飲む時、ドライフードとは対象的に、ほとんど音を立てない。時々〈ピチャ、タプッ〉と小さな音がするくらい。
ゴハンも食べて水も飲んで満足したようで、チコは大きく伸びをして居間へと戻って行く。

私は後を追いかける。

テーブルマットにデレンと寝そべり、前足で耳の横から鼻にかけて擦っている。

俗に〈猫が顔を洗う〉という行為。

それが終ると身体の毛を丹念に舐めて、最後に前足の裏をペロペロと舐めた。
これら一連の〈食後の行為〉を終えると、軽く伸びをして起き上がり、トコトコと寝所に入って身体を丸めた。

また寝るのだ。


これで明日も寝不足だ……


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