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ジャム・ジャム・ジャム
【SF その他小説】

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ジャム・ジャム・ジャム-21

「ジャムッ!」
「ばッ、早まるな!」
慌ててエイジとダナが彼女を止めようとする。
しかし、ジャムは「来ないで!」とヒステリックに叫んだ。
「あたし、この一ヶ月ギャラクティカを駆け回って、気付いたの。やっぱりTVの前で歌ってるより、ずっと生き生きしてたと思う。やりたいことやれたんだもの――後悔なんてない」
彼女は言って笑みを浮かべた。
「馬鹿野郎ッ、死んだら元も子もねえだろうが!」
エイジが叫んだ。
「歌うのも止めていい、死ぬのだけは止めろ!」
今まで声を枯らすほど叫んだことがあっただろうか。
死ぬくらいなら、とエイジは再び叫んだ。
「此処にいろ!」
言葉の最後、エイジの声は掠れていて。
しかし、ジャムは笑みを浮かべたまま引き金を引いた。

「……?」
目を瞑っていたエイジとダナが、そっと目を開けた。
目を開いた先には、オートマグを片手に笑う、シアン色の髪の少女。
「流石骨董品、オートジャムね」
ジャムはテーブルの上に、ごとりと銃を置いた。
「お、前……ッ!?」
「死ぬわけないじゃない」
唖然とするエイジに、彼女はしれっと言う。
「まだまだ冒険し足りない――だから」
ネオンの光るギャラクティカの街を見つめてから、ジャムは二人に向かって屈託なく笑った。
「よろしく頼むわ、エイジ、ダナ」
差し出された右手を見つめ、エイジとダナの二人は互いに顔を見合わせた。
「……どーすんだ、ダナ」
「降参するしかないかしら、ね」


終章 あんた、何かした?

――あんたがあまりにもマジだったから、本当にジャムが死ぬかと思っちゃった。
というのはダナの言葉だ。エイジ自身もそう思った。
あそこまで本気になってしまったのは、何故なのだろうか。
冷たい夜風に当たりながら、エイジは消え行く街の明かりを眺めていた。
「ね、エイジ」
ジャムがその背に声をかける。
「何だよ」
ぶっきらぼうなのは、先程のことがあったからだ。
しかし彼のぞんざいな態度など気にした様子もなく、ジャムは彼の傍らに立った。
「あのさ、ありがと」
そんなジャムの言葉に、エイジはそっぽを向いて答えた。
「別に――トレジャーの情報が入るならこっちにとってもプラスだし、賑やかな方が楽しいって言えば楽しいし」
「そうじゃなくて」
ジャムはエイジの言葉を遮って言う。
「あたしの歌、気に入ってくれて……ありがと」
そこで、エイジも思わずといったふうにジャムを見た。
「あたし、切ない恋の歌なんて嫌いだった。暗くて、辛気臭くて」
遠くを見つめるような彼女の表情はしかし、どこか晴れやかだった。
不意に彼女はエイジの顔を覗き込んだ。
どきり、とエイジの胸が鳴る。
何となく顔が熱くなったように感じて、彼はひんやりとした手摺に顔を押し付けた。
「でも、さっきエイジがいいって言ってくれたじゃない。リスナーからの直接の言葉って初めてで――嬉しかった」
「『歌わされてる』って思うから、嫌になるんじゃねえの?」
エイジがぼそりと口を開いた。
「どんな歌でも楽しんで歌ってみろよ。さっき、笑顔で歌ってたろ?」
彼は視線を逸らすように上を仰いで、言う。


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