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やっぱすっきゃねん!
【スポーツ その他小説】

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やっぱすっきゃねん!U…C-7

「オレがコーチに就任した初日に、アイツが〈カットボールを教えてくれ〉って言って来たんだ。〈打たせて取るボール〉を覚えたいからと言ってな」

「今年から軟式ボールも変わったから、変化しやすいんじゃないですか?」

佳代の言う通り、今までのディンプル付きだったボールが、今年から無しに変わった。確かに変化球は変更前よりキレるだろうが、

「今さら新しく覚えるより、今の持ち球を磨く方が得策だ。それに、〈真っ直ぐあっての変化球〉だ。だから、真っ直ぐのスピードを上げる努力をしろと言ったのさ」

一哉のアドバイスは正解だったようだ。これまで軟投派と思われていた岩田のストレートが、青木に迫るほどの威力を見せた。

「オマエら、全員大盛りか?」

一哉の問いかけに佳代は弾んだ声で、

「ハイッ!チャーシューも大盛りで」

「オマエのおかげで痛い出費になりそうだ…」

グランドを見つめながら言う一哉の顔は、言葉に反して微笑んでいた。


「プレイッ!」

試合再開。瀬高は1番から。岩田は山崎のサインを見た。
岩田の目が見開く。サインはチェンジアップ。

(…どういうつもりなんだ?)

岩田は不可解に思っているが、山崎の読みだった。

〈8点差を何とかしようと、先頭バッターは出塁を1番に考えて振ってくる。特に1球目は真っ直ぐに的を絞ってるハズ…〉

岩田が首を振る。が、山崎は再びチェンジアップのサインを出す。

(…クソッ、打たれたらアイツのせいだ!)

何度目かのサインで岩田は仕方なく頷いた。サインがなかなか決まらない場合、ほとんどのバッターは、真っ直ぐを投げてくると思う。
岩田の動作を見て、瀬高中のバッターは真っ直ぐと確信した。

早いモーションから岩田が投げた。バッターは真っ直ぐのタイミングでステップする。

が、ボールが来ない。
完全にタイミングを外されたバッターは、開き切った状態でバットに当てた。

ボテボテのゴロがサードに転がる。佐々木は数歩ダッシュすると、軽快にさばいてファーストに投げた。ファーストの菅は送球を軽く捕った。

まずワン・アウトだ。

次の2番バッターには一変した。1球目を真っ直ぐ。2球目はスライダー。3球目を高めの真っ直ぐで外して、4球目をフォークで三振に仕留める。

2アウトを取った所で、山崎が岩田に駆け寄った。

「…どうだ?インハイ三つで勝負しないか」

山崎は笑みを浮かべて岩田を誘う。当然、岩田は乗って来る。


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