投稿小説が全て無料で読める書けるPiPi's World

childhood friend
【悲恋 恋愛小説】

childhood friendの最初へ childhood friend 0 childhood friend 2 childhood friendの最後へ

childhood friend-1

今日は6時間授業。
しかも、かったるくて眠たい授業ばかり。
げっそりした顔でサラリーマンや大学生をかき分け改札を出る。
ウォークマンのボリュームをひとつ下げて家路につく。
と、こちらに歩いて来る学生服の青年に目を奪われた。
なんでこんな所にいるの!?
あなたの家は、全然違う方じゃない…
心臓が痛い。
体中が熱い。
緊張している。
ふと目があった。
…思い切りそらした。
背中を冷たい汗が流れる。
そのまま2人はすれ違った。
どちらも、何も言わないまま。
私は、振り返れなかった。
あなたが立ち止まり、振り向いたコトをわかっていたから…

ねぇ、私とあなたは、いつからこんな風になってしまったんだろう?

私とあなたは生まれた時から一緒だったけど、私は幼稚園、あなたは保育園だったし、小学校に上がってもクラスはずっと別だったし、運がなかったのかもね。
でも、私はあなたが好きだった。
ベテランの先生も手を焼く超問題児だったけど、本当は誰より優しいコト、私は知っていたから…
ちっちゃい頃はみんな怖がって近寄らなかったのに、高学年のあたりかな?かっこよくなってきたらいきなり手のひら返したように女の子がよって来て、『和弥の何を知ってるの!?』って思ってたけど、そんなコト口にする勇気はなかった。
そんなモテモテのあなたが私の所にチョコレートの催促に来て、どれだけ嬉しかったか、あなたは知らないでしょう?

でも、あれが悲劇の始まりね。
和弥にとっては、なんでもないかも知れないけど。


空も教室も茜色に染まる。
私は、帰り支度をしながら、同じクラスの女の子たちと他愛ない話をしていた。
オチもつき、帰ろうと鞄を持った時、その声は聞こえた。
「千春ちょっといい?」
「?うん」
私は、和弥に呼ばれた。
何の用だろうとは思ったけど、別に普段と大差ない、日常の範囲だと、私は思っていた。
…でも、甘かった。

女の子たちが騒ぎ出す。
和弥が『千春』と呼んだのに過剰反応したらしい。
お願いだから、そんなに騒がないで と、心の底から思いながら、
「だって、幼なじみだし」
と言い、和弥の後を小走りで追った。
空き教室に入ると、和弥は私の手をとり、ポケットから取り出したあめ玉を2粒くれた。
なぜ急にあめ玉をくれるのかが不思議で、和弥を見ると、小さな声で、
「おかえし」
と、呟いた。
カレンダーを見て納得する。
3月14日。
今日は、ホワイトデーだ。
「ありがと」
私は、あめ玉を握りしめた。
本当に、本当に嬉しかった。
…でも、翌日から和弥は、私を『千春』と呼ばなくなった。
私は懲りずに『和弥』と呼び続けたけど。
私は、子供ながらに和弥との間に溝が出来たのを感じた。
きっと、彼女たちに悪気があった訳ではないと思う。
きっと、和弥も、恥ずかしかっただけだと、今なら思う。
…でも、小学生の私は、この溝が寂しかった。


小学生なんて、こんなもん。
初恋なんて、こんなもんだと自分に言い聞かせた。
でもね、飽きっぽい私なのに、なぜか和弥の事だけは諦められなかったの。
この時、思いを断ち切っていれば、更につらい思いはしなかったのに…

ねぇ、人生諦めが肝心って思っていた私だけど、大切な物や事についてはいつまでも粘り強く、…悪く言えばしつこく、追いかけていたと思うの。
和弥の中ではどうか知らないけど、私の中で『好きの定義』は、『どうしても諦められないコト』みたい。
私の中では、『好きだから諦めない』んじゃなく、『諦められないから好き』だった。
…そして、それは唯一、あなただった。

ねぇ、私たちの15年って、なんだったんだろうね?

昨日今日現れたような人に簡単に崩されちゃうくらい、脆く儚いものだったなんて、知りたくなかった。

あれから3年たつけど、未だにあの日ほどつらい出来事はない…
私の好きな和弥は、どこに行っちゃったんだろう。

…それとも、和弥は変わってなくて、私が本当の和弥を知らなかったのかな?


childhood friendの最初へ childhood friend 0 childhood friend 2 childhood friendの最後へ

名前変換フォーム

変換前の名前変換後の名前