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遮光
【悲恋 恋愛小説】

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遮光-2

「私をなにに巻き込むの?」
落ち着いてきたのか、少しだけ、口調が柔らかくなったような気がした。しかし俺は、その『なに』に対して答える気などない。それは、俺が…俺の血の宿命だ。
「言えない」
ガバッと梨花の体を引き剥がし、脇を通り抜けて両親の墓の前まで歩く。唖然として俺の姿を見ている梨花を後目に、墓の前にしゃがみ込んで花を添え、線香を上げる。
「墓はまた今度洗ってやる。今年は我慢してくれよ」
合掌して数秒後、墓石を見つめて立ち上がった。打ち明けるべきか迷った真実。障りだけでも話してやろうかと思った。でも、出来ない。俺は墓から離れ、歩いて梨花の横を素通りしようとする。
「知ってるよ…」
鳥肌が、足を、腕を、背中を、首筋を駆け抜けてゆく。それは、梨花の口から発せられる言葉を予感していたからかもしれない。
「律真弘希…」
ドクンと心臓が波を打つ。
「律真家はある病を抱いて生きているのよね…アナタも…」
何故だ。何故知ってるんだ。
「生まれた時から心臓に腫瘍を持ち、その腫瘍は平均、18歳程度で完全な形になり…」
俺は話した事などない。じゃあ…。
「死に至る」
何で知っている?
「稀にその腫瘍の成長が遅い体質の者もいて、アナタの父はそのパターンだった…」
「何で知ってる…」
我慢の限界だった。誰かが教えたのだとしたら、そいつを捕まえて殺してやろうとまで考えた位だ。
「アナタこそ…」
小さく呟いたその言葉は、俺の耳を掠める程、小さな響きしか持たない。
「何で…気付いてくれなかったの…」
いきなり流した涙の意味がわからず、ただ立ち尽くす事しか出来ない。気付く?なにを?俺は知らない。
「私は──」
その時、運命や神の存在を呪う瞬間だった。

《私は──アナタの妹なのに…》

俺だけが知らない事実。梨花が知っていた真実。結ばれるべきではない二人は……歪んだ形で出会ってしまった事を…憎んだ。
「アナタが気付かなければ、私の元を離れなければ、私は言わなければならなかった…だって双子なんだもん…」
兄妹。しかも双子。あまり似ていないところから、2卵性なのだろう。そんな考えしか浮かばない。
「何で…お前は知ってるんだよ…」
必死で絞り出した言葉は、ただ真実を問いつめるだけの冷たい言葉だった。内に秘めた、真の言葉じゃない。
「私のアナタが付き合ってるのが…父に知れたのよ…『お前とアイツは兄妹だ』って、即座に言われたわ…そこから立ち直った私の気持ちがわかる?辛かったわ。悲しかったわ。でも…アナタが…好…きだから…」
手で口を押さえるが、嗚咽は漏れたまま止まらずにいた。
「俺も…お前が好きだった…だから…」
「別れたの?」
俺の胸に飛び込む梨花の姿は、俺にとってのシンデレラそのものでしかなかった。愛しくて、だから別れを告げたんだ。
「ああ…でも…」
「離さないよ…もう、互いに隠す事もないんだから…」
ポツポツと、雨は俺たち二人をあざ笑い、卑下するかの様に降り始め、俺たちはその雨の中で、飽きる事なく、いつまでも抱き合っていた。そう、いつまでも…。


《──の墓場にて、男女二人が抱き合ったまま死亡しているのが見つかりました。検死によると、心臓に出来た原因不明の腫瘍による死亡事故だと思われます。尚、この腫瘍は男女両方にあり、同時刻に急発症し、死に至ったとの事です。では次のニュースです──》


END


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