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遮光
【悲恋 恋愛小説】

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遮光-1

キレイな恋など儚い幻。キレイな愛など永久の夢。だから俺は、
「別れよう。サヨナラ」
と梨花に言った。それが高校の卒業式。俺は、梨花から逃げるように、あの町を跡にした。親なんかいないから、どこに行ったって、アルバイトさえ見つかればやっていけるし、親が残した財産だって、まだ4000万円程残っている。何の仕事をしていたかはしらない。何せ親父は、自分の事をあまり口に出さない人だったからだ。両親が、俺が中学の時に死んでから、俺は一人だったんだ…。

「弘ちゃん、上がっていいよ」
「はい、わかりました」
マサさんは、客の入りをみて俺に告げた。今働いている小さな飯店は、マサさんとマサさんの奥さん、それと今年で17になる真理で成り立つ。そこへ、アルバイトとして俺が入ったのだが、それと同時にマサさんは格安で、自宅の一室を俺に貸してくれた。
「弘希上がるの?」
「ああ。ちょっと行きたい場所があるんだ」
高校から帰り、家の手伝いを始める為に準備をする真理は、エプロンを着る手を止めて話を振ってくる。
「行きたい場所?」
「命日でな…」
「あ…ごめん」
本気でブルーになってしまったので「気にすんなよ」とだけ言って家を出た。
「気を付けろよ〜」
遠くで真理が叫ぶ。OKと、手を大きく振ってやると、頷き店内に戻っていく。容姿的にも、性格的にも、真理はなかなかいい線にだと思う。だけど、結局それだけ。その線を越えることなどない。
 電車に乗り、前に住んでいた町の方へと赴く。墓は町の近くに建ててしまったため、必然的に行かなければならない。
「暑いな…」
電車を降りてから墓場までは、歩いて20分といった所で、この時期にはちょっとキツい運動になる。アルバイトを昼に切り上げても、それ相応の運動をしなければならないのに対して憂鬱で仕方がない。
「くそ…まだか…」
山のふもとにある墓場なので、少し山を上る必要もあったが、がんばって乗り切り、墓場までたどり着いた。が、両親の墓の前には、純白のワンピースを着た、髪の長い女の人が立っていた。見慣れた後ろ姿、仕草、思い出したくないモノが溢れる。
「梨…花」
だいぶ離れているはずなのに、俺の発する声に過敏に反応し、横の髪を手の甲でかき上げながら振り向いた。その後に言った梨花の言葉は、聞こえてはないが届いていた。
『弘希…どうして』
目を見開いたまま、ゆっくりとこちらに歩み寄る梨花を前に、俺は後ずさる事も遮られた。その、虚ろな眼差しに…。
「なんで?」
俺の前に立っても尚、その言葉を口にする。
「保育園からずっと一緒にいたのになんで……?私に飽きたの?私が悪いの?」
涙をポロポロとこぼしながら、瞳に訴えかけてくる。俺には、梨花の期待に応える自信がないだけなんだ。
「ああ…飽きたよ」
「!」
とっさに、俯く梨花を胸に納めてしまう。
「やめ…てよ……。私に…飽きたんでしょ…」
俺の胸でもがく梨花をガッチリと掴んで、
「違う…」
と一言呟くと、梨花は逆らうのをやめ、じっと俺に抱かれるようになる。力なく、だらんと両腕をぶら下げ、涙を頬に伝わせたままだ。
「俺は…自分に飽きたんだよ…上辺だけでしか人とつき合えない自分に…」
「上辺…だけ?」
「……確かに今でもお前が好きだ。自分の気持ちに嘘をついてまで別かれようとまで言ったよ。でも、お前を巻き込むのはゴメンなんだ…」
素直に、今の心の内を打ち明けた。本当の気持ちを、真実を。


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