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男女8人恋愛物語
【学園物 恋愛小説】

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男女8人恋愛物語 2nd incident-1

―――山科 那智(やましな・なち)は怒っていた。
待てど暮らせど待ち人来たらず。1月の寒空の下、30分近く待っているのだが待たせ人は一向に現れる気配がない。
「遅れるなら連絡くらい寄越したっていいじゃない…」
手袋を嵌めていても、まだ冷える手を吐息で温めながら辛抱強く待つ。
珍しくお互いのスケジュールに空きのあった休日を利用してデートをしようと那智が提案したのはつい3日前の事。
“もしかしたら忘れてる…?”
有らぬ憶測が脳裏に浮かぶ。
“いや…昨日確認の電話したもの…大丈夫よ…”
様々な不安が那智を押し潰しそうになる。

携帯電話の通常着信音、Eメール受信音、更にはCメール受信音までもを最大音量にして待ち人である、八女 雪仁(やめ・ゆきひと)からの連絡を待つが、依然として携帯電話は大人しいままである。

前作で登場した渚や十と同じく生徒会役員の2人(ちなみに会計担当)は、生徒会の役務に加えて、雪仁曰わく『小銭稼ぎ』のアルバイトをしている。
雪仁の働く、某大手飲食店は週替わりでシフトを組む為、割と融通が利くのだが、那智のアルバイト先である某スーパーマーケットでは月替わりのシフト制なので、休みたい日に休めないのが現状である。
『それなら雪仁が那智の休みに合わせてシフトを組んでもらえば良いのでは?』という疑問が浮かぶのだが、
『バイトが休みの日くらい自由に過ごしたい。毎日学校で顔合わせてんだから、わざわざ休みの日にまで付き合う事ないだろ』
と頑として雪仁が譲らないせいで2人の時間はどんどんすれ違ってゆくばかりなのだが、今回は珍しく2人の休みが重なった為、半ば強引に那智が誘ってデートの運びとなった。…のだが、どうやら雲行きは怪しいようだ。
因みに只今、待ち合わせ時間を30分過ぎたところである。勿論雪仁の姿は見えていない。
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「いい?待ち合わせは明日の10時に学園の正門前。絶っっ対忘れないでね」
鏡の前で一人ファッションショーをしながら那智は雪仁と電話中である。
「何度も同じ事を言うな。聞き飽きた」 因みに雪仁はというと、自室でお気に入りの紅茶をお供に歴史小説を読んでいる。心震える場面で那智からの着信があり、少々不機嫌である。
「だって、忘れてるかもしれないじゃない」
「案ずるな。俺は馬鹿じゃない。それよか明日の天気を心配しろ」
「?何で?」
「全く…。デートだ待ち合わせだと浮かれる前にちゃんと調べておけ。明日は前線の影響で関東一帯を含め日本列島は雪模様だとよ。生憎だったな。どうする?デートは中止に…」
「やったぁ〜!!!」
雪仁の『デートは中止にするか?』の言葉を遮って那智は大喜びしている。
「…あ?」
「やった!!雪なんて最高じゃない!!いつ?いつから降るの!?」
「…ちょっと待て。落ち着け。お前、雪だぞ?分かってんのか?クソ寒いんだぞ?」
「分かってるわよ?」
「それなら何故喜ぶ…」
「嬉しいから(ハート)だって東京に雪なんて珍しいじゃない。粉雪でも水雪でも何でもいいの。更に積もってくれれば言う事無し(ハート)」
「…分からん…」
雪仁はワザとらしい程大きな溜め息を吐いた。
「何でよ?」
「何で寒いと分かっている外に自ら飛び出そうとするんだ。映画を観るだけならまだしもブラブラするなんぞ…。考えただけでも疲れる」
2人のデート内容は、近くの映画館で話題のサスペンス映画(雪仁のリクエスト)を鑑賞し、ウィンドウショッピングを楽しんで帰る予定となっている。
「バカねぇ〜。寒いから良いんじゃない。寒いから寄り添って歩くでしょ?だから2人の距離がグッと近付くの。で、いつから降るの?」
「昼前から降り出すんだと。…暖かい格好しとけよ」
「ウフフ。優しいね、雪仁」
「知らん。一緒に居て風邪引かれたら後味悪いからな」
アッサリと言うが、これが雪仁の精一杯の照れ隠しだという事を那智は知っている。


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