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飃(つむじ)の啼く……
【ファンタジー 官能小説】

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Dawn-13

「でもさ、勉強のレベルが全然違って…瞬く間におちこぼれの仲間入りして…悪い奴らとつるんで、単車乗り回して…もうさ、居合いの腕なんてとっくになまってると思ってたらさ…」

そして、満面の笑みを腕で隠した。

「おれ、まだ捨てたもんじゃないよな!」

「ああ…。」

その声の低い響きに、大和は腕をどけた。

「なかなかの腕だ。捨ててしまっては…勿体無い。」

静かに、その女は笑った。さっきの、死のうとした間際に浮かべたような凍った微笑ではなくて、今度のはちゃんとした笑顔だった。

大和が期待したとおりの、美しい笑みだ。

「なぁ…名前は?」

ぼんやりとした口調で、大和が聞いた。

「…イナサ。」

「それだけか?」

「それだけだ。」

大和は笑って、体を起こした。先に体を起こしていたイナサに、顔が近づく。

「じゃあイナサ、おれの頼みを聞いてくれねえかな、共に戦ったよしみって事で、一つ!」

イナサは面食らって、少し居住まいを正してしまった。

「あ、ああ・・・かまわない。」

そんな彼女をにやっと見て、

「また、バイクの後ろに乗ってくれよ。今度はもちろんおれの単車でさ。」

「…それは、巷で言う“ナンパ”というやつか?」

ごく真面目に、イナサが聞く。張り倒されるかと一瞬恐れたが、その頬にかすかに赤みがさしたのを見て、大和は笑った。

「そ、巷でいう、それ。」

つられて笑うイナサが、

「いいのか?私を乗せるとまた…あんな戦いに巻き込まれるぞ。」

「いいよ。お前となら…。」



この人のことを、もっと知りたい。

予感が確信に変わって、不意に目をあわすのすら恥ずかしくなってしまう。それは、どちらに先に訪れた変化だっただろう。ただ今は、ゆっくりと、慎重に、お互いの手に触れた。

それだけだった。



それだけだったのにイナサには、自分の中の水が、全部入れ替わったような、そんな気がした。新しい水、清んだ水に。

一方で大和は、自分の中の水が今にも沸騰しそうなのを感じながら、目の前の彼女の目に浮かんだ戸惑いを、推し量ってそれを隠した。

―彼女の事は、大事にしたい…だから、焦ることはないんだ。



宝石のようなネオンの群れはどこかに消えて、今は群青の町並みが二人を見下ろしていた。人通りもまばらな通りを二人で歩きながら、イナサは心のどこかで、今見ている光景が一番好きだと思った。

静謐な空気は、太陽の光に暖められるのを待って沈黙している。



何かが始まるのを、予感しているかのように。


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