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「巡る季節に」
【悲恋 恋愛小説】

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「巡る季節に」-2

次の職場が決まったら報告がてら会いに行こう。
そう考えて僕は転職活動を開始した。
そして夏。
僕はとある会社の広報の内定を得た。
やりたかった仕事だ。
反面、躊躇いもあった。
契約社員。時給720円。一年契約で延長はなし。
そして沖縄。

決して、この土地に愛着を持っている訳ではないけれど、貯金がない身で契約を終えたら二度と本土に戻れないかもしれない。
結局、僕は内定を辞退した。

貴女に相談をしようかとも思ったけれど、やはり仕事を決めた報告にしたい。
そうこうしているうちに夏が過ぎ、秋が来た。
まだ、次の職場は決まらなかった。

年が明けたら貴女のいる元の会社に帰ろうか…ぼんやりそう思っていた矢先、先輩からの電話が鳴った。
訃報だった。

地面がグラッと揺れた気がした。
翌々日が通夜だった。
かつての仲間とのこんな再会を僕は望んでなんかない。

写真の貴女は僕が知るかつての貴女より幼くて、何だか知らない人みたいだった。
きっと、旦那と出会った頃の貴女なのだろう。
沢山の弔問客の中、貴女との対面は叶わなかった。

そのまま行った仲間との飲み会で僕は原因が癌の再発であったことを知る。
つまらない意地を張らずに連絡をすれば良かった。
後悔しても詮無いことを思いながら僕は酒を酌み交わす。


よく晴れた翌朝、僕は正装をし貴女との最後の別れに向かった。
末席に着いて間もなく声明が流れ出す。
沢山の人の中で僕は貴女の居場所を見失う。
「ごめん」と言う囁きが耳元で聞こえた気がして顔を上げると旦那が棺に取り縋って泣いていた。
その資格は、僕には、ない。


「出棺です」
どこか遠くへ運ばれていく貴女。
二度と会えない貴女。
貴女があんなにも遠い。
そのまま僕は、行き場をなくして立ちすくむ。


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