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年の差
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年の差-5-2

『俺は、先輩に別れてくれつて頼んだんだ』
ぽつりと呟く。
私はベッドサイドに座り、話を聞いていた。
どこで、出会ったか。
どうゆう風に出会ったのか。
どれぐらい、仲が良かったのか。
『悠が、俺に別れてくれるように頼んでくれって言われた時、きちんと断って、説得すればよかった』
目線は足元に。
本当に後悔しているみたいだった。
『じゃ、あの日、別れた彼女と来る予定だったっていうのは…』
『悠だった。付き合ってはないが、久しぶりに元気になったから、ライブでも連れてってやろうって、思った。』
『じゃ、さっきの告白は…』
『あれは、嘘じゃない。本心だ。悠の側には、真下先輩がいて欲しいと思うのも本心だ。』


陸を必要としている人が他にもいる。
陸は優しい。
月並みの表現かもしれないが、優しい。
私が困って、泣きたくなったら、頭を撫でて、話を聞いてくれる。
離したくない。
ずっと、一緒にいたい。




…だけど、もう一人の私が計算し始めた。
『先生と付き合ったら、丸く治まる』
…と。
先生と付き合う?
確かに、都合はいいかもしれない。
賢いし、気が利く。
大切にもしてくれるだろう。
だけど、この二年余りのことを考えた。
それは、どうしようもなくかけ替えのない大切な日々だった。

距離を取って、関わる性格の私に、人と関わる楽しさを教えてくれた。
人を見た目で判断しがちだった私に、人を見る目を教えてくれた。
人を頼らなかった私が、人への頼り方を教えてくれた。
愛することが苦手な私が、初めて一緒にいたいと思わせた。


だけど。
この世には、陸を必要としている人がもう一人、いるんだって。


嫌だ。
離れないで。
でも、それを決めるのは、陸だ。

もし、陸が忘れていなかったら?


忘れていたら。
過去の思い出として、懐かしんで話してくれたら、中島さんの様子は言わないでおこう。
だけど、決めた。
少しでも悲しんだり、怒ったりしたら…





病院に連れて行き、どちらかを選んでもらう…と。

『先生?一つ、いいですか?』
『何だ?』
『なんで、素直に病気であることを言わなかったんですか?今時、ガンは不治の病でもないでしょ?』
すると、先生は再び視線を落として言う。

『悠はこう言ってた』
大きく深呼吸をして、吐き出すようにいう。


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