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アイしてる★☆
【悲恋 恋愛小説】

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アイしてる★☆-9

第八話『予兆』
コンコン
むやみに分厚い扉は、軽く叩いただけでよく響く。
「失礼します」
丁寧に扉を開け、その部屋に足を踏み入れる。蹴り跳ばしたい衝動を、抑えて。

部屋の中もむやみに広く、一人の老婆が上等な椅子に腰かけていた。老婆はしゃがれてはいるが、気品ある声で言う。
「ほら見なさい」
真っ直ぐに向けられた視線を、カナタは受け止める。
「今までで一番、最低最悪の男だわ。ギラギラの金髪、だらしない格好。本当、人間のクズね」
「・・っ」
カナタは静かな怒りをこぶしに込め、ぎゅっと握る。
「クズね」
意図的になのか、もう一度その言葉を繰り返す。
「・・・っ!」
カナタの顔に憎しみが刻まれた。
老婆はその顔を見て不気味に微笑む。
「三回目よ?」
ねっとりと、ゆっくりと老婆は言い放った。カナタに選択の余地は無い。

それが、約束だから。
老婆はゆっくりと立ち上がり、カナタに背を向けた。
「もうカナタに辛い思いはさせないわ・・」憎しみ悲しみ愛情・・その言葉には、なんともいえない思いがこもっていた。


カナタの瞳から大粒の涙がひとつ、こぼれ落ちた。


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