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【DOLL】
【SF 官能小説】

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【DOLL:zero-2】-1

私は呆然と立っていた。


暗い研究室の中、血まみれの腕に生ぬるい胎児の遺体を抱いて…………。


心音が高まり、今しがたの出来事が頭の中を駆け巡る。





━……ボーン……ボーン……

時計の鐘が午前0時を知らせた。


「……遅い…」


私は研究室で、飲食店で働く妻の帰りを待っていた。新しい研究の成功を報告したかったのだ。
飲食店だから多少遅くなるのは当たり前なのかもしれないが、身重となった妻がこんな時間まで帰らないことはなかった。

この街は治安が悪い。本来ならばそんな妻を外へ出すのは気がひけるが、研究者である私の給料だけではやっていけず、妻にも生活費を稼いでもらう他なかったのだ。

しびれを切らした私は、かけてあったコートを羽織り、夜の街へと走った。

最初に妻の勤め先を回ったが、やはり『すでに帰った』という返答が帰ってきた。

どこをほっつき歩いているのだろうか…その憤りはやがて、心配と焦りに変わってゆく。


私は走り回った。

この汚れた街を縦横無尽に。



妻の立ち寄りそうな箇所を捜したがどこにも姿は見当たらず、やがて商店街に至った。

表通りの一部と言えども、色街方面とはうって変わって人通りが少ない。その魚市では大量の魚の臓器などの残骸や生ゴミが放置され、野犬が貪り食っていた。

汚れた廃ビルの隙間からは男のえげつない声が聞こえる。


『………ぅっ!…イッ…イクッ…イクぞ……』


私は足を止めた。

なぜかこの時その声が耳に入って、私を呼び寄せた。


猛烈な匂いに鼻を覆った。周囲に散乱したゴミや、廃ビルをつたうパイプから漏れだした排水の匂いのようだ。込み上げる吐き気を抑え、そっと近付く。


目に入ってきたのは…


完全にイカれた光景…。



声の主であろう男は、私に背を向ける形でその後ろでケツをさらす女を犯している。女はすでに意識がないらしくゴミの山に頭を埋めている。男が腰を振る度に隙間に頭が出たり入ったりしていた。そして、その女は紛れもなく……私の妻だった。

そう…これが一晩中探しまわった妻との再会だった。


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