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藤崎美弥の過去
【学園物 恋愛小説】

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藤崎美弥の過去-3

私の夢……。

それはお母様のような誰もが認める女優になりたい。
そして、私の夢を応援してくれた本宮くんの期待に応えたい。
この二つの思いが私をこの道に進む決意をくれました。
私は当初、良い顔をしなかったお父様を必死に説得しました。
私が説得を続けた最後の日、お父様はこう仰いました。
「やはり、美弥は私と美奈の娘だな。一つのことを決断したら梃子でもその意志を曲げないんだからな」
そしてお父様は言葉を続けます。
「辛くなったらいつでも帰っておいで。ここがお前の家なのだからね」
とても穏やかで優しい笑顔でした。
こうして私はまた一つ絶対に夢を叶えなければならない理由ができました。
私は一人じゃない。
無償で私を信じてくれる人、期待してくれる人がいるのだから。

この後、私は優佳さんの申し出を快諾してからの日々は慌しかった。
まずは転校の手続きで、現在通っている学校では芸能活動に支障が出るとのことだったので、芸能活動を認めている櫻華学園小等部へ編入したのです。
そして毎日行われる歌やダンス、演技指導のレッスン。
かなりハードなスケジュールでしたが、私を信じ応援してくれる人達のことを思えば弱音を見せることはできません。
いつかまた本宮くんに出会えたら私が頑張って夢を叶えたことを認めてもらえる様に……。

でも、私はこの時まで知りませんでした。
私と本宮くんがこの櫻華学園で再会していたことに……。
その事を知るきっかけになったのは昼休みのことでした。
私が裏庭を通り、図書館へと向かっている時でした。
裏庭のベンチに見慣れた人物を見つけたのです。
一人は私ととことんまで波長が合わずいつもケンカをしてしまう朱鷺塚香織さん。
そしてもう一人は、確か香織さんの友人の相沢さんだったかしら……。
二人はベンチに座り楽しそうにアルバムを開いていました。
「ん、美弥じゃないの。どっか行くの?」
私に気付いた香織さんが声をかけてきましたので、一応私も答えます。
「これから図書館へ行くところですよ」
「はぁ〜、あんたってばアイドルのくせに勉強熱心ねぇ」
「当たり前でしょ、学生が勉強しないで何をするの」
香織さんの言葉に呆れながら私が答えると更に呆れた答えを香織さんが満面の笑顔で言います。
「あはは、そんなもん遊びに決まってるじゃん」
「香織ちゃん……それって……」
どうやら香織さんの横に座っている相沢さんも私と同じ意見らしく、言葉にはしないものの表情は私と同じで呆れた様子でした。
「ところで、お二人は何をご覧になっていますの?」
二人の間に広げられたアルバムを見て私が訪ねます。
「ああ、これ。これは相沢家秘蔵のアルバムじゃあ!」
そして、開かれたページの一枚の写真に私の視線は釘付けにされてしまいました。
「あ、相沢さん。この写真って……」
「あっ、これですか。これは家に来た頃のお兄ちゃんですよ」
そこには紛れもなくあの頃の、私を助けてくれた長い黒髪の女の子のような顔立ちの男の子の姿がありました。
「あっはは……いやぁ、圭介ってば本当に笑わせてくれるわよね。これってどう見ても女の子よね。まじで美少女だわぁ」
大笑いする香織さんの声はこの時の私の耳には全く届いていませんでした。
こんなに身近に彼がいるなんて全く予想すらしていませんでした。
でも、これからの私が取るべき行動がはっきりしました。
彼に私を認めてもらう為に……。


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