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藤崎美弥の過去
【学園物 恋愛小説】

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藤崎美弥の過去-2

「大丈夫か?……」
そう言うと本宮くんは私の前に手を差し伸べてくれました。
私は泣きながらも本宮くんの手を取ると、彼は私をゆっくりと引っ張りあげてくれて立たせてくれました。
「ほら、もう取られるなよ。大事なものなんだろ」
「う……うん、ありがとう……」
泣いている私にペンダントを着けてくれた本宮くんにお礼を言うと、彼は恥ずかしそうに顔を背けながら頬を掻いていた。
「べ、別に礼を言われることなんてしてねーよ。俺はあーゆー最低なやつらが許せないだけだし、最近暴れてなかったからストレスの発散にもなったからさ……」
照れくさそうにしながら言う彼の言葉は表面的には粗野な感じでしたが、でも本当はとても優しい人なんだってことを私に感じさせてくれます。
「しっかし、これだけ可愛いと目立つだろ? お前も大変だな」
屈託のない笑顔で笑う本宮くんは私の頭を撫でながらポケットから出したハンカチで私の涙を拭ってくれたのです。
「わ、私……お前じゃないです。藤崎……藤崎美弥です」
「そっか、美弥か。可愛い名前じゃん。俺、本宮圭介」
笑顔で私の名前を可愛いと褒めてくれた本宮くんの顔を見て私はドキッとしてしまいました。
その笑顔はどこまでも明るくて、まるで本物の女の子の様に可愛らしいものでした。
そして、ふと気付くと本宮くんの頬に擦り傷が出来ていたのでそこに目が行ってしまったのですが、彼もそのことに気付いたらしく明るく答えてくれました。
「ああ、こんなの唾つけとけばすぐに治るさ」
心配そうに見つめる私に本宮くんはそう答えると自分の指を舐めてからその指を傷口に当てています。
「でもさ、美弥。お前はもっと自分の主張ははっきりさせた方がいいぞ。どう見ても内気で大人しそうな美少女って感じだからあーゆー性質の悪いやつらに絡まれるんだぞ」
「でも……」
「はい。でもは禁止! 俺は美弥のことを否定しないから思ったことを言ってみな」
その言葉を発端にして私は自分が思っていることや、いろいろな話をしてしまいました。
正直、お父様にも話したことがない私の夢や希望の話もしてしまったのです。
話している途中、笑われるんじゃないかって思って本宮くんの顔を見てみたらとても真剣に聞いてくれていました。
ここに私のことを理解しようとしてくれている人がいる。
それはとても安心すると言うか幸せな感じでした。
「そっか……そこまでしっかりした夢があるんなら美弥はもっと頑張らないとな」
「…………うん」
彼の言葉に小さく頷きながら答える私に満足したのか、嬉しそうな笑顔を見せる本宮くんでした。
「おっと、そろそろ家に帰らないと涼子叔母さんが怒り出すな」
「もう行っちゃうの?」
「うん。俺さ今日、引っ越すんだ。だからいろいろこの町のこと覚えておこうと思ってブラついてたんだ。でも、最後にこれだけ可愛い子に出会えたんだから良しとしよう」
本宮くんの言葉に顔が熱くなるのと同時にすごく寂しい気持ちの私がいました。
本宮くんがこの町からいなくなっちゃう……。
やっと見つけた私を理解してくれる男の子。
やっと見つけた私を守ってくれるお姫様のような顔立ちの王子様。
やっと出会えたのに今日でお別れしてしまうと思った私は自分でも信じられない行動をしてしまった。

チュッ……。

私は本宮くんの傷ついた頬にキスをすると恐らく真っ赤であろう顔を俯かせたままその場を走り出してしまいました。

そして翌日の月曜日。
本宮くんの言葉通り、彼は私の通う学校から転校してしまいました。
そして、更に数日後。
女優であったお母様の友人であり、プロダクションの社長でもある音神優佳さんが私の家に訪ねてきて、私を芸能界にデビューさせたいと仰りました。


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