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中嶋幸司奮闘記
【コメディ 恋愛小説】

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中嶋幸司奮闘記-9

「立てよっ!! お前が美弥ちゃんを……」
この男の卑劣な行為にキレかけていた俺は奴の髪の毛を掴み再度立たせようとした時、自分の脇腹に異変を感じた。
熱い……?
何でこんな時に脇腹が……?
それから時間差の様に痛みが伝わってきた。
俺は異変を感じる脇腹に手を当てると、そこには濡れた感触が伝わってくる。
もしかして刺された!?
その事実を俺の頭が認識すると同時に、身体が震えだしついには片膝を廊下についてしまっていた。
「ふへ、へへへ……お前が悪いんだぞ。僕の邪魔をした挙句、僕を蹴ったりするからこうなるんだ……」
男は苦痛に歪む俺を見下ろすとそのまま小走りにその場を去っていく。

畜生っ!
こんな時に身体が動かないなんてありえねえよ!
俺の知り合いを……。
俺の友達を……。
不安のどん底に叩き落した奴をみすみす見逃すのか!?
中嶋幸司はその程度の男なのかっ!?
たかが脇腹を刺された程度で身動き取れないなんて言ってる場合じゃねえだろっ!
お・れ・は・女の子の味方の中嶋幸司なんだよっ!!
今、根性を見せないでいつ見せるんだよっ!!
「ぐ……っ、ぐううっおおおっ!!」
俺は脇腹を押さえながら呻き声を上げ立ち上がると、男が去っていった方に走り出した。

私はこの体育の授業中、一人考え事をしていた。
美弥の事もあるが、それよりも私の代わりに動いてくれている中嶋の事だった。
彼は運動神経抜群だが、例に漏れず頭脳労働は苦手なタイプである。
そんな彼に私は朝、今日の体育の授業中に件の変質者が来るかもしれないと伝えていた。
こんな勘など外れてくれると有難いのだが、私が彼を嗾けた手前どうも心配なのだ。
そんな考え事をしていると、体育教師は体育倉庫からライン引きを取って来る様に私に言ってきた。
一人考えるにはちょうど良いタイミングだったので、私は一人で体育倉庫に向かった。
体育倉庫に向かう途中、校舎の方から見慣れぬ男が血相を変え裏門に向かって走っていくのが見えた。
あれは私達が探していた変質者ではないか!?
しかし、何の策もないまま彼を追いかけても非力な私では現時点ではどうしようもない。
こうして冷静に状況を分析し、考える事にした私の思考を邪魔するかの様な雄叫びが校舎の方から響いてきた。
この聞き覚えのある声は中嶋だった。
どうやら変質者の存在に中嶋が気付いてくれたらしい。
少しだけ安堵した私は後の捕り物は彼に一存しようと思ったが、なんか中嶋の様子が少し変である。
脇腹を押さえながら走っているのだ。
それに表情も今まで見た事がないくらいに険しくなっており、何か無理をしているのは明白だった。
そして、私の存在に気付いた彼は私に向かって叫んだ。

「柊っ!! そこのボールをこっちに蹴り出せっ!!」
俺はたまたま居合わせた柊の足元にあるサッカーボールをこっちに蹴るように叫んだ。
刺された脇腹の激痛を考えるとこれ以上奴を追いかけるのは無理っぽかったので勝負に出る事にした。
いきなり俺から指図され、一瞬きょとんとした柊だったが俺の考えを理解したのか、俺の走る手前にボールを蹴り出してくれた。
これは一か八かの賭けだ。
俺は海外で活躍してるプロのサッカー選手みたいな精密なシュートってのは苦手だが、破壊力には絶対の自信がある。
こんな状態の俺だが奴にボールを当てる事が出来れば確実に足止めは出来る。
俺と奴との距離は約20メートルくらいだが、これならギリギリのところだろう。
そうこうしているうちにボールは俺の足元近くに来ていた。


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