投稿小説が全て無料で読める書けるPiPi's World

中嶋幸司奮闘記
【コメディ 恋愛小説】

中嶋幸司奮闘記の最初へ 中嶋幸司奮闘記 5 中嶋幸司奮闘記 7 中嶋幸司奮闘記の最後へ

中嶋幸司奮闘記-6

「なあ柊、アレなんだけど絶対ロクでもない事を考えてるぜ」
「考えるだけなら良い。実行したらただで済まさないがな。しかし、中嶋というやつは本当に考えている事が表情に出やすい奴だな。ある意味単純で助かる」
「ん? 圭介どったの? そんな憐れむ様な目で俺を見て」
「いや、これからお前が経験するだろう苦労を考えると……な」
圭介が俺の肩を叩いてからすぐに背を向けたので表情は分からなかったが、同情的な様子なのは俺でも何となく分かった。
「……バカが……柊と藤崎の策略にまんまとハマりやがって……」
何か圭介が呟いていたが、俺には聞こえなかったので聞き流したが、これから美弥ちゃんの為に忙しくなる俺はいろいろとやる事を考えるのだった……が! その直後、俺達のいる教室に愛那、智香ちゃん、朱鷺塚がそれぞれの手に器の乗ったトレンチを持って教室に入ってきた。

「中嶋先輩、おっ待たせしましたぁ〜」
いつもの笑顔で愛那が俺のところへ来るのとは対照的に疲れ切った顔の朱鷺塚は近くにある机にトレンチを置くと圭介に抱きつき泣きを入れていた。
「圭介、ゴメン。あたしに料理ってスキルを身に付けるには向いてないみたいだよぉ」
「まあまあ、そんなすぐに諦めるなんて香織らしくないよ。俺も付き合うから少しずつ練習していこうな」
朱鷺塚の頭を撫でながら慰める圭介だが、お前もよくここまで朱鷺塚を手懐けたもんだよ。
あいつの場合、家柄はお嬢様だけど、剣道有段者の体育会系だし直情的でおっとこ前だから色気もへったくれもない奴と思ってたけど、最近は圭介の前だけは可愛いとこ見せるのな。
流石に智香ちゃんが教えてくれていたせいなのか、愛那の作った肉じゃがはいつもと違いまともな味付けだった。
「……どうですか? 中嶋先輩」
「うん、うまいっ! これなら毎日でも食べたい」
俺の言葉にホッとしたのか、愛那は顔を綻ばせる。
「よかったねぇ、愛那ちゃん」
「はいっ! これも智香先輩のお陰です」
智香ちゃんと愛那が嬉しそうにしている後ろでは、圭介が難しい顔をして朱鷺塚の作った料理を見ると言うより睨んでいた。
「…………これって……」
「…………うん、肉じゃが……」
「……そっか、頑張ったんだな」
言葉少ない会話の後、意を決したのか圭介は朱鷺塚の作った肉じゃがに箸を伸ばし、じゃがいもを恐る恐る口にした。
「…………」
「どうかな?」
難しい顔の圭介を申し訳なさそうに見る朱鷺塚の姿は日頃の態度を知ってる俺にはかなりレアな光景だ。
「うん、うまいよ。見た目はアレだけど、味はちゃんとした肉じゃがしてるよ。俺の為に頑張ってくれてありがとうな、香織」
圭介の言葉に嬉しそうにする香織だけど、圭介もよくそんな言葉をさらっと言えるな。
「ふーん、良かったわね香織。相沢くんに誉めてもらえて嬉しいのは分かるけどもう少しお顔を引き締めたら如何かしら。思考がだだ漏れよ」
「なっ!? 美弥っ!? あ、あんたにそんな事言われる筋合いはないわよっ。それに圭介はあたしの彼氏なんだから圭介の前でくらい嬉しそうな顔したっていいでしょっ」
「ま、私は一向に構わないけど、周りにみんながいるって事をお忘れなく」
美弥ちゃんに言われた朱鷺塚が周りを見ると、俺をはじめとしたみんながニヤニヤと笑顔で見ていたことに気付き、朱鷺塚は恥ずかしさからか更に顔を赤くしたのだった。


中嶋幸司奮闘記の最初へ 中嶋幸司奮闘記 5 中嶋幸司奮闘記 7 中嶋幸司奮闘記の最後へ

名前変換フォーム

変換前の名前変換後の名前