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年の差
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年の差-3-4

この匂いは、私を落ち着けたことがあった。
そう。『あの日』だ。





「来ないよね…」
ライブ会場の前で、待ちぼうけ。
『今度からは友達でな』
あいつに言われた最後の言葉。
付き合っているときに取ったこのチケット。
取れたときは、二人で喜んでいた…はずだった。
来るはずがないことを、分かっていた。
分かっていたのに…なんで来たんだろ?
散々、高井にも愚痴ったし、泣き言も聞いて貰った。
なのに、私はまだあの言葉を信じている。
…有り得ない。これでは自分があまりにも可哀相だ。
左腕につけている腕時計は、午後6時を示している。
もう開演だ。
せめて、一人で楽しもう…
「あれ?北野じゃない?」
声がする方を見てみると、Tシャツにジーパン、首にはネックレスがついており、完璧『オフ』の前川先生が立っていた。
「あ…今日は。」
軽く頭を下げる。
なんでこんなとこで?
ここは学校がある辺鄙な田舎と違って大都市の一部。
こんな広いとこで、会うとは…それに、この先生、笑顔が素敵だとか、おもしろいだとか周りは言っているが正直、少し怪しい。
しかし、うちの部活で名前だけの顧問をしてもらっている以上、ぞんざいには扱えない。
「何?ライブでも行くわけ?」
「はぁ…」
「もしかして、高井と行く予定とか?」
何で高井が出てくる?
そう心の中で、突っ込みながら、
「友達を待ってることには変わりないです」
「ふ〜ん、でも時間過ぎてんじゃん。入ろうよ」
はい?何を言い出すんだ、この先生。
「はぁ…」
押しに弱い私は、行くこととなった。

ライブは楽しかった。
フラれたことなんて、忘れて歌を聞いたり、一緒に歌ったり、MCを聞いて笑ったり出来た。
「あ〜楽しかった!」
「そうか。良かったなぁ〜よし!次は飲みに行くぞ!」
何か言ってる。
でも…今日は、規律とか常識とか全て忘れたい。だから、飲みに行くことにした。


ライブ会場からすぐのチェーン店の居酒屋。
「かんぱぁ〜い」
と、先生はビール、私は烏龍茶を飲む。
それから適当に、食べ物を頼む。
「先生。今日は、ライブに行ってくれてありがとうございます。」
「別に、御礼なんていらないよ。それに、北野ってどんなやつか知っておきたかったし」
頼んだだし巻きを摘む。
「どんなって?」
「なんか、北野って、周りの女子と違うっていうか、しっかりしてるっていうか…でも、天然なとこもありそうだし」
「そんな…特に、何も。」
「一つ聞かせて。何で、俺に顧問頼んだわけ?」
何でって言われても…
「必要だったから、です」
「ふ〜ん…やっぱ、変わってるわ」
含み笑いをして、こっちを見る。
この先生、よく見たらカッコイイのかもしれない。
無駄な脂肪もなさそうだし、愛嬌のいい顔をしている。
「先生、私も聞いていいですか?」
「何?」
「何で、今日あのライブ会場の前にいたんですか?」
「あぁ…それは」
半分くらい残っていたビールを一気に飲み干し、吐き捨てるように言った。
「フラれた彼女と来る予定だったからだよ」


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