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信じる者は救われたい
【コメディ 恋愛小説】

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信じる者は救われたい10-1

【第10話】由々しき恋文

梅雨入りを目前に控えたある朝…
俺は自分の下駄箱の前で1人、顔を青白く染め立ち尽くしていた…。
俺は結して雨が嫌いな訳では無い…
草木にとっても人にとっても雨は絶対に欠かすことの出来ない大切なものだし。
濡れる事だって、荒がおうとさえしなければ実に気持の良いものだ…
よって梅雨入り目前など俺にとっては庭に植えた紫陽花が開花する楽しみを与えてくれる年に一度の大事なお客様ってところだ
だから別にそんな事が原因で俺の心がうろたえる事はありはしない…
問題なのは、今この目の前にある俺の上履きの上に【何故か】存在する1通の淡い桃色の便箋だ…
俺は鉛のように重たく震える手でその便箋をとり…朝から急遽重みの増した体を教室へと運ぶ…。

今朝は教室の掃除も、花壇の水やりも…ましてや、便箋の存在を知る前にいつも通りコンビニで気恥ずかしさと戦いながら買ったイチゴ牛乳に手をつける事など到底出来そうも無い…

俺は恐れていた…
こういう由々しき事態になる事を心の底から恐れていた…

だからこそ俺は誰も周囲に寄せ付けはしなかったし、数々の悪行、悪態をついてきた…
何があろうと誰1人、俺に近付きたいなどという間違いをおこさせない為に…

別に俺は自信過剰でも自意識過剰なワケでも無いと思う…
ただ…怖かったのだ…
他人に好かれる事が…好意を持たれる事が…。

自分自身が一番、自分の愚かさ、汚さ、醜さを知っている…
それを知れば、恐らく誰も自分に好意を持つ様なことは無いだろう…
それならば有りのままを晒け出せば良い…そぅ思う人もいるかもしれないが、それもまたあまりに弱い俺には出来なかった…

嫌われるのは良い
馬鹿にされるのも良い
笑われるのも構わない
しかし自分の中の逃げようの無い露骨なまでの醜さを、他人に自分にこれ以上、自覚させられるのは俺には耐えがたい苦痛でしかなかった…

それを知られ嫌悪されるくらいなら、自分で決断した態度、言葉、行動で憎まれる方が何倍もマシだった…

そぅ俺は気付いている…
でも認めてはいけない…
認めればあまりに弱い俺は、きっと生きてさえ行けなくなるから…

大丈夫…

今回もきっとやり過ごせる…

大丈夫…

俺は認めない…

俺は……

逃げてなんか…いない


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