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『彼方から……』
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『彼方から……』-18

『美宇は必ずここに来させる。だから風呂の用意をしておいてくれ。それと二泊三日の予定で出掛けてる筈だから二日だけ泊めてあげて欲しいんだ。その間に美宇の服をクリーニングに出してくれ。理由は見たら分かるから、美宇のコト頼むよ母さん……』


両手で持っていたマグカップがカタカタと震える。
あの極限状況の中であたしを助けた後の事まで考えていたなんて……

「あの子が最初に私の前に現れた時、会社の同僚だって言ってた。だけど本当は私の事を心配して来てくれていたのね。」

克樹ならきっとそうするだろう。親を大切にする人だから……

「でもね、一番心配していたのはあなたの事なのよ?克樹は私に聞いたわ、あなたの事を恨んでいるか?って……」
「………」
「今は恨んでいない。克樹は助ける事が出来て満足してると思いたいって私が答えたら、唇を噛み締めて涙を流していたの。死んでからもあなたの事が心配だったのね……」

胸が詰まる……

もう泣かないって誓った筈なのに、目頭が熱くなっていく。

どこまで底抜けに優しいのよ……

「あなたがいなくなって、血相変えてあの子が飛び込んで来た時、あたしはわかったの。この子は克樹なんだって……最期に私を見つめて俺の気持ちをわかってくれてありがとうって言ってくれた。私達の子供でよかったって……その言葉で救われた気がしたわ。」

克樹……あたし心の底から思うよ。

あなたと知り合えてよかった。

あなたを好きでよかった。

あなたに愛されて幸せだったって……

「二日間、泊まっていってくれるわね?」
「……はい…お世話になります……」

心の奥底で、望んではいけないとわかっているけど、もう一人のあたしが叫んでしまう。

なぜ、ここにあなたが居てくれないの?と……

「じゃあ、克樹の部屋を使ってね。」
「え!?そんな、おばさま!」

おばさまの突然の申し出にあたしは戸惑ってしまった。だってそこには克樹の想い出が溢れ過ぎているから……克樹との約束を守りきる自信が無くなってしまうもの……

「克樹からあなたに渡して欲しいと言われた物があるの。ついて来て。」

有無を言わさぬといった感じでおばさまは克樹の部屋へ歩いて行く。

「中に入る前に言っておくわ。もし、あなたにとって重過ぎる物なら受けとらなくていい。判断はあなたに任せる……それが克樹からのメッセージよ。」

そう言っておばさまは克樹の部屋の扉を開けた。
まるで、ちょっと席を外しただけみたいに部屋の中は克樹で溢れている。

「机の引き出しの中よ。開けてご覧なさい。」

トクン…トクン…トクン…

回りに聞こえてしまうぐらいに心臓が高鳴る。部屋の奥に進んであたしは引き出しに手を掛けた。

ゆっくりと開いていく引き出し……

そしてあたしの目に飛び込んだのは可愛くラッピングされた小さな箱だった。

リボンを外し、包み紙を取ると中から出て来たのは

「おばさま!!これって…まさか、これって……」

箱を手にしたまま、あたしは振り返る。濃紺のラシャで出来ている小箱を手にして……


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