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ewig〜願い〜
【悲恋 恋愛小説】

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ewig〜願い〜-5

「よく私だとわかりましたね・・・・・・嵩雅様・・・・・・」
あぁ。わかるとも。
俺はお前を求めていたんだから。
こんなにも。
余裕がなくなるほどに。
こんなにも。
熱くなるほどに。
こんなにも・・・・・・
抱きしめたいと思うほどに。
「もうすぐ冬なんですね・・・、こんなにも月が澄んでいるんですもの。」
そう言って、絢芽は空を見上げた。
月明かりに照らされた絢芽は、この世の何よりも綺麗に見えた。
「そうだな・・・。冬になったら火鉢を毎朝持ってきてくれるか?」
俺は少し顔が火照っているのを感じながら、優しい声で呟いた。
「はい、もちろん。毎朝お持ちいたします。」
絢芽はとびっきりの笑顔で微笑んだ。
その夜、心臓の音がうるさくてなかなか寝付くことができなかった。
そんな些細な日々がずっと続くと思っていた。





「嵩雅、聞いたか?」
久しぶりの歌詠みのあとで、庭を眺めながら初瀬道は神妙な口調で呟いた。
「何をだ?」
いつもの明るい初瀬道の口調とはまったく違う、雰囲気に俺もかしこまった感じで聞き返した。
「最近、武士のやつらが力をつけてきているらしい。貴族の世も終わりに近づいてきている。もしかしたら、武士のやつらが農民を盾に、一揆を起こすかもしれないっていう話だ。気をつけたほうがいいかもしれないぞ。」





俺はその話をどこか人事のように聞いていたかもしれない。
俺は民を大事に考えているから大丈夫だと、鼻をくくっていたかもしれない。
そして、事件が起こった――。




「嵩雅様!!!大変です!!!民が・・・・・・武器を持って襲って参りました!!!」
寝床でうたた寝をしていた俺は飛び起きて雨戸を明け、あたりを見回した。
あたりは武器を持った農民とそれを必死で抑えようとする警護の者、農民の暴動を盾に人を斬る武士でいっぱいだった。
「なぜ……こんなことに……。」
俺の頭の中は真っ白だった。
そしてひとつ頭に浮かんできたもの、それは――絢芽だった。
俺は全速力で絢芽を探した。
あたりは火を放たれたらしく、だんだんと火が俺を囲んでいた。
女中らは我先にと逃げ惑い、警護の者からは逃げてくださいと声をかけられた。
だけど、俺はそれら全部を無視して絢芽を探し続けた。
いや、絢芽のことしか考えられなかった。
そして、火の中で黙ってうずくまる絢芽を見つけた。
「絢芽!!!!」
涙を溜めた顔を上げて、絢芽は俺を見つめた。
「嵩雅様!!!」
俺は無我夢中で絢芽を抱きしめた。
火はもう逃げられないぐらいに強く、俺たちを囲んでいた。
「絢芽……、良かった。死ぬ前にお前を見つけられて……。」
「嵩雅様……私……怖かったんです。一人で死ぬの……。」
そう言った絢芽の体は震えていた。


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