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つかの間の愛情
【その他 恋愛小説】

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旅立ちの日-3

「コレ」

一巳が里香に缶コーヒーを渡す。

「ま、それでも飲んで待ってようぜ。喋ってたら20分なんてすぐさ」

〈プシュ〉という音を立てて缶を開けると、口元に持っていく。それを見ていた里香も遅れて缶コーヒーを飲んだ。
空はいつの間にか一面、藍色になり、東の彼方に月が顔を覗かせていた。一巳はポケットからハイライトを取り出すとライダーで火をつけた。

「美那とはいつから?」

「エッ?」

突然の質問に戸惑う里香。しばし考えて、

「2年になってからです。私…内気だから……なかなか友達が出来なくて。彼女とは同じクラスになってから仲良くなって……」

一巳は唇を尖らせて煙を吐くと、

「そっか、おかげでオレも里香ちゃんと知り合えたわけだ」

一巳の言葉に俯き、両手を膝の上に乗せている里香。
そんな彼女を一巳はチラッと見ると、タバコをふかしながら、

「また遊びにおいでよ。オレ達なら大歓迎さ」

その時、向こうから眩しいヘッドライトをつけたバスが、こちらを照らしていた。

「さっ、迎えが来たようだ」

一巳はそう言うと立ち上がり、見えるようにバス停の前に出た。バスはゆっくりと減速し、バス停の横に停車した。間もなく乗車ドアーが開く。

「また来ます」

里香はそれだけ言ってバスに乗り込んだ。そして、一巳の側の空いた席に座るとジッと彼を見つめている。
ドアが閉まる。〈パァ〜ン〉とクラクションをひとつ鳴らしてバスは動き出した。里香に向かって軽く手を挙げる一巳。バスは暗闇の中を走り去って行った。

里香を送り、再び土田の部屋に戻ると二人がニヤニヤと笑っている。
〈気味悪いな〉と言う一巳。




美那から彼女は一巳が好きでココに来たと聞かされた。

「どういう事か順を追って説明しろよ]

「里香ね。あと一月で転校するの。両親の離婚でね、岡山に行くんだって。だから思い出に付き合ってやってよ!」

一巳は頷きながら美那に、

「理由は分かった!でも何でオレなんだ?オレは今日、初めて彼女と会ったんだぜ」

一巳の疑問に美那は簡単とでも言いたげな顔で、

「ああ、それは私が一巳さんの写真、里香に見せたもの」

「なっ!!」

驚く一巳をよそに、美那はカバンから数枚の写真を取り出した。そこには様々な角度から撮られた自身が写っているではないか。


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