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「とある日の霊能者その」
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「とある日の霊能者その1」-1

ボクは幽霊だ。普通の人には見えない。
近くには人間、ただしボクが見える。……こいつだ、橘達也。現在の達也は、
「すぅ……すぅ……」
規則正しい寝息で、寝台列車特有の長椅子で眠っている。いかにも気持ち良さそうに。
ボクは窓の外に目をやった。真っ暗だな。それに景色が通り過ぎるのがすごく早い。……当然か、列車だもん。
景色見てもつまんないなぁ。達也は寝てるし、なにか退屈しのぎになる事はないだろうか。と、
……む……
自然に足下に目が行った。なんにもない、ボクの脚。これも当然か、幽霊なんだもん。生きてないんだもん。
……むむむぅ……
嫌な事を思い出してしまって、顔をしかめてしまう。こんな時、達也はボクをブサイクだと罵る。分かってるんだけど。
……仲里、君……
今では過ぎ去った記憶。でもそれは拭いきれない。
忌まわしき記憶はボクを呼び覚ます。
だから、忘れられないのかもしれない。
だから、未練になっているのかもしれない。
だから、ボクは彼の元に逝きたくなかったのかもしれない。
川崎涼香……ボクは今、ある方の指示で達也をある場所に連れていく途中だ。達也にとっては、あんまりいい気分じゃないと思う。だってせっかくの土日を潰されちゃうんだもん。ボクだったら耐えられない。だからせめて、ボクが楽しいプチ旅行にしてやろう、と思ってる。
目的地へはまだ着かない。当分はこの状態だろう。
ガタンゴトン、ガタンゴトン。次の音が前の音を追いかけるみたい。延々と繰り返すフーガみたいだ。
……暇だぁ……。しょうがない。(幽霊なんだけど)寝るか。



「たださ、孤独はよくないんじゃねぇか?」
誰……?
「なにも出来ない、なんて言いたくねぇ。なにかしたいからよ、俺」
誰なの……?
「俺……いや、なんでもねぇ」
仲里君の真似をするのは、誰……?
それとも、仲里君なの……?
「水上……良かった……正気に、戻ったんだ、な……。良か……た……」
仲里君の、死体?



……いやああぁぁぁ!……
気がつくと、そこは列車の中。……どうやら、夢を見ていたらしい。幽霊のくせして。
「んん……?どうした?」
どうやら達也を起こしてしまったらしい。ボクの声は霊感のある人にしか聞こえない。幽霊だからね。まあ、そんなわけで達也が起きちゃったわけなんだけど、
「ゴキブリでもいたか?」
なんて言おっかなぁ。……あんまり仲里君の事は思い出したくないんだよなぁ。
……なんでもないよ……
便宜上、それで済ませることにする。余計な話はしない主義だし。それに達也はあまり追及しないタイプだし。
「そっか……ふぁ……せめて静かにしてくれな……」
やっぱりね。達也は気にしてない。そのまま睡眠を再開だ。毛布が達也を包んだ。
さてとぉ……静かにしなきゃ、達也が寝られない。どしよかな?
ガタンゴトン、ガタンゴトン……。列車の音、
かー、がぁぁ……。達也の寝息、
こう、なにもなく静かな時、ボクはあの事を思いだす……。


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