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年の差
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年の差-1-8

「あ、北野先輩!」
式が終わり、会場の外に出る。
会場の外とはいえ、建物の中であることには変わらないため、寒さはマシだ。
毎年、学校の近くにある公立のこのホールを借りて式は開かれる。
外では式に出れなかった後輩達がいた。
「卒業、おめでとうございます!これ、部活一同からです」
1つ下の後輩である、結城という数少ない女子の一人に、花束と両手で持ったら丁度いいサイズのプレゼントを、受け取る。
「ありがとう!大切にする!」
「先輩には、お世話になりましたもん!」
「そんな、なんかしたっけ?」
「やだなぁ〜私が彼氏にフラれて、部活の練習どころじゃなかった時…」
「あ〜そんな時もあったね」
他の後輩も思い出したように頷く。
「あの時、高井先輩に怒られて、それを庇ってくれたのは北野先輩でしたもんね〜」
そうだ。そんなことも、あった。それで、高井と喧嘩したんだ。
「私の方が慌てちゃいましたよ!すごい勢いで言い合いしてて…普段からお二人は仲良かったのは知っていたから、余計…」
カラカラと笑う結城。
笑えるってことは、もう立ち直ったんだな。
「そういえば、高井先輩は?」
ドキっ!私が動揺したことがよく分かる。
あんな事があったから、正直どんな顔して会えばいいのか分からない。
「さ、さぁ?向こうの方で男子と話してんじゃない?」
「そうなんですか?なら、呼んで来ます!」
結城が私の返事を聞かずに、呼びに行く。


程なくして、結城は高井を連れて帰ってくる。
「高井先輩と北野先輩が、二人で写っている写真撮りましょ!」
結城は楽しそうだ。…何も知らないから。
「おう!北野、折角だから撮ろうぜ」
私に提案する高井。
その顔は、もう吹っ切れた−そういった顔に見えた。
「そうだね。」
「じゃ、その辺に適当に立ってもらって…」
「テキトーって何だよ」
高井が突っ込む。
「いや!そんな、深い意味は…」
結城が明らかにビビる。
部活での高井を知っているやつは、高井を『怖い先輩』と思っているのも少なくない。
でも、皆に慕われていて、本当にいい先輩だったと思う。
「じゃ、並んで下さい〜はい、チーズ」
パシャ。
デジカメのフラッシュを浴び、高井と写る。
「どんな感じに撮れた?」
結城に見せて貰う。
そこにいる二人は、以前と何等変わりない『高井と北野』だった。
「部員、全員で撮ろうぜ」
高井が提案する。
「じゃ、全員集めてきます!」
結城と、その他の後輩が、別の後輩を探しに、人込みの中に消える。
私と高井は何故か並んだまま、立っている。
「北野」
「何?」
「何だその頭?」
「あんまり突っ込まないで。私も微妙だと思ってるから」
「それに、化粧は濃し…」
「普段からしていなかっただけ。それに高井こそ、何?その趣味の悪いネクタイ」
「あんまり突っ込むな。俺も微妙だと思っているから」
「ぷっ…!何それ?」
思わず高井の顔を見る。
「…また、飲みに行こうな」
「うん」
「どっちが潰れるか勝負だ」
「私に勝てるかなぁ〜焼酎一杯飲んだだけで、ダウンしたのに」
「リベンジしてやるよ」
「この後のクラスでの打ち上げで、勝負ね」
「罰ゲームは、何にする?」
「そうだなぁ〜」
高井は考え込む。
「どっちが先に、気になっていたかを言う」
「その勝負、私が勝たせてもらうわ」


今日は、雲一つない快晴。
春の陽気に包まれた会館。
私も包まれる。
視線の先には、愛しい彼が手を振って待ってくれていた。


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