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BUCHE DE NOEL
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BUCHE DE NOEL-11

「俺も楽しかった」
「えっと、それで、これ」
「あー!うさぴー!!」
女の声が俺を呼んだ。振り向くと、ミキとマヤだった。
「駅まで迎えに行こうとしてたんだよー」
「もう行かないとぎりぎりになっちゃうよ」
俺はポケットの携帯を再度取り出す。デジタル文字が6時半を示している。
「ごめんね、ぎりぎりまでひきとめて、用事あるって、知らなくて」
知らないのは、当然なのに。傷付いたような、でも笑った表情のまりあを見て、俺もひどく気持ちが落ちていった。
「俺こそごめん…。また遊ぼうな」
「うん、じゃ」
ひらひらとまりあはてを振る。
「もうみんな来てるよ〜!あとはうさぴーだけ」
とマヤが俺と腕を組む。いつものことなのに、俺はひどく嫌気がさした。
公園の前の道を渡って、もう一度彼女を振りかえる。すると、まりあがプレゼントを渡しそびれたことに気付いて、こっちへ走ってくる。
「雪兎!―――……ッッ!!」
道の真ん中で急に彼女は胸をつかんでかがみこむ。そこへ、大通りから、猛スピードで車が曲がってきた。



キキィーーーーッッ!!



「まりあ…?」



彼女は宙に舞って地にたたきつけられる。赤い水溜まりがさぁっと広がる。



「まりあ!!」



まわりがざわざわと駆け寄ってくる。誰かが救急車を呼んでいる。
俺は、まりあの手をずっと握っていた。片時も、離すことなく。



もう、離したくなかった。





病院につくと、すぐに彼女は緊急オペ室に移される。何もかもが慌ただしくて、俺はまわりが動くままになっていた。
「まりあ…」
にぎった彼女の手は冷たくて、夢中でさすったことを思い出す。手が震える。頭が、まわらない。
「雪兎くん!!」
駆け寄ってきた女の人はアヤノさんだった。その横にはまりあとよく似た男の人がいて、この人がお兄さんだということはわかった。
「まりあは!?」
「今、ここに入って…出血が多くて…それで…」
まわらない。頭がまわらない。パニック状態に陥っている俺をアヤノさんはゆっくり椅子に座らせた。
ガッと扉が開いて、医師が一人出てきた。お兄さんの元に来た医師はこう告げた。
「やるだけのことはやってみます。ただ、まりあさんは心臓が悪いので……」



心臓が、悪かったんだ。だから、走っちゃいけねぇんだ。
なのに、彼女は。



走ってしまったんだ。



俺のせいで。




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