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ゆきのした。
【家族 その他小説】

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ゆきのした。-5

 という訳で、僕の千円と姉ちゃんの五百円で安眠セットなる代物を買ってみました。

 僕の方が出費が激しいことに誰もツッコんでくれません。 空しいです。

 荷物持ちは僕です。 哀しいです。

 姉ちゃんはというと楽しそうに凍結した水たまりをパリンパリンと
 踏んで遊んでます。 悔しいです。

 せめて釘を刺しておかないとなあ。 勘違いしてたら困るし。

「…一応言っとくけど、父さんへのプレゼントだからね? 決して姉ちゃんの私物じゃないからね?」

「わ、わかってる……!」

 非常に心配だ。 …本当に理解してるように見えない。

 と、それはさておき、


 やはり姉ちゃんがいつもと違う。

 そこまで能天気な人でもないし、かと言って楽天的って訳でもない。

 端から見れば微笑ましい光景かもしれない。 しかし弟の僕から見れば
 元が極楽蜻蛉に近い性格だから違和感はないものの、微妙に恐い。

 何か企んでるんじゃないかってくらい機嫌が最高潮な姉ちゃんを見るのは
 一ヶ月振りかな。

 …立場が逆転した気分。 こういうのも良いかもしれない。


「あ、そうだそうだ!」

「え、どうしっ!?」

 荷物を持ってない方の腕、つまり右腕に姉ちゃんが抱きついてきた。

「あはっ、温かーい」

「ちょっ、重い…重いって!」

「…そんなに太ってないですー」

「違う! バランスが保てないの!」

「じゃあ……えいっ!」

 後ろから覆い被さるように…いや、実際覆い被された。

 そして派手に転んだ。

 幸い、雪がクッションになってくれたお陰で怪我もなく、プレゼントも汚れなかった。

 転ばせたくせに、くふふと笑いながら再度抱きついてくる姉ちゃん。

 それはとても小学校高学年とは思えないほどの無邪気さを振る舞っていて、
 楽しそうで、嬉しそうだった。

 あと、本人の前じゃ言えないけど

 今思えば、予想通り

 とても柔らかかった。


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