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飃(つむじ)の啼く……
【ファンタジー 官能小説】

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飃の啼く…第15章-4

「だっ…誰っ!?どこにいるの!?」

「ここじゃよ…さくら殿…」

近くの水溜りが、風も無いのに波立つ。用心して近づくと…そこには奇妙な男の顔…水鏡に、何と無く見覚えのある顔が映っている。水溜りの鏡に像が映るなんていう不自然なことに驚かないのは、前例があるからなのに…

「あ…あなた!あなたは……えーっと…」

思い出せない。

「羽黒山の蛇族、油良。」

「っ!そうそう!油良さん!どうしてここに…?」

近くの街灯が、ばちっと音を立てて消え、当たりは一瞬にして闇に包まれてしまった。

それを見たゆ…ゆ…そう、油良が

「時間が無い、急いでこの中に!」

私が躊躇する間もなく、水溜りの中から油良さんの腕が伸びてきて、私を水鏡の向こうへ連れて行った。地面にぶつかるのを畏れて堅くした身体には、冷たい水がしみこんでくるだけだった。



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「ちっ…老いぼれが邪魔しおって…」

暗がりの中から現れた蛇は、ただの水溜りに戻ったところを憎憎しげに睨み付けた。

だが、まだ失敗ではない。失敗とはすなわち…死を意味する。



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「どういうこと!?油良さん!」

鏡を抜けるときの妙な感覚に酔っ払いながら、息せき切ってたずねた。

「私…なんていうか、前の私と違うみたいで、その…」

「解っておる。」

言葉にならない私の言葉を、油良が制した。

「過去を乱したものがいる。申し訳ないことに、われらと同じ、蛇の一族だ。」

「過去を…?」



私が立っていたのは、奥深い、湿った森の中にある沼のほとり。足元には羊歯が覆い茂り、針葉樹の大木が、夜空すら覆い隠していた。


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