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社外情事?〜気晴らしの酒と思わぬ睦事〜
【その他 官能小説】

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社外情事?〜鬱屈飲酒と意外情事〜-5

――ぼんやりとしていた意識が、はっきりする。黒一面だった景色に色がつき、次第に明瞭になっていく。
――まず目に入ったのは、見慣れない天井だった。誠司は飛び起きる。
「……ここ、は」
辺りを見回す。不自然に小綺麗な家具や、普通の部屋にはまずないであろう装飾品などがある事から察するに、どうやらここはホテルのような場所らしい。
「……どうして、こんな所に?」
不思議と冴えた頭で、自分の記憶を辿ってみる。
いつも通りの朝。
いつもより少しきつい電車の車内。
いつも通りの出勤。
上司による毎度の嫌がらせ。
いつも通り定時に会社を出て。
おやっさんのいるあの居酒屋で酒を飲み。
そこまでは覚えているのだが、そこから先は記憶があやふや。しまいには抜け落ちている始末。
一応、誰かが隣に座って、少し話をした記憶はあるのだが、それが誰かも思い出せない。
そして気が付けば今、自分はホテルのような場所にいて、ベッドの上で寝ていたという事実がそこにある。
「……」
一体どうしてこうなったと、あぐらをかき、腕を組んで顎に手を当ててしばし考える。
――と。

「あら、目が覚めたのね」

不意に女性の声。誠司は「うわっ!?」という素っ頓狂な悲鳴とともに飛び上がり、バランスを崩してベッドから転げ落ちた。
「ふふっ…そんなに驚かなくてもいいのに」
誠司の慌てようがおかしかったのか、くすくすという笑いのまじった声。誠司は、床にしこたまぶつけた左手をさすりながら、視線を上向きにやる。
そこには、バスローブを身にまとった長髪の女性がいた。
誠司は一瞬誰かと思うが、すぐに彼女が、居酒屋で自分の隣に座った相手だという事を思い出した。
「気分はどう?気持ち悪いとかはないかしら?」
扇情的な姿をさらしている事に気付いているのかいないのか、彼女は前かがみになって誠司の顔を覗き込む。すると、ゆったりとしたバスローブの合間から、豊満な胸の谷間がはっきりと見えてしまった。
それがばっちり目に入ってしまい、誠司は狼狽しながらも、「だっ、大丈夫ですっ」とうわずった声で答えた。同時に、さっと目をそむける。
「とっ、ところで、俺はどうして」
「どうしてここにいるのか、でしょう?」
その態度を誤魔化すための問いかけは、彼女が遮るように後を引き継いでしまった。彼女は笑みを投げかけてから、彼に背を向ける。
「君、あそこで寝ちゃったのよ。しばらくほっといても起きる気配はないし、幾ら揺すっても全然だめで。それで、そのままにしてもおやっさんに迷惑だろうから、とりあえず手近なホテルに入った……って話なの」
彼女は言いながら、ソファに向かって歩く。
髪の下で、むっちりとした美尻が左右に大きく揺れているのは、おそらく気のせいだ。
「そ、それで……すいません、何か迷惑かけちゃったみたいで」
情けない格好で視線を逸らしたまま、それでも誠司は謝罪を口にする。それに対し、彼女は「いいのよ、気にしなくて」と手を振りながら、ソファに腰を下ろす。
今度は裾の間から肉付きのよい太ももが、際どい所まで晒される。おかげで誠司は女性をまるで直視できない。
それを知ってか知らずか、女性はテーブルの上に置かれたグラスを手に取り、ロックアイスを入れた。
「飲む?ブランデーだけど」
そのグラスを掲げ、女性は誠司に向かって振ってみせた。氷が揺れ、カランと音を立てる。だが、その音を聞いた誠司は、静かに首を振りながらベッドの上に腰を下ろす。
勿論、相変わらず女性の方は見られないままだ。
「あら、そう」
さも意外そうな声を漏らす彼女。その後にキュポン、と心地いい音がしたので、おそらく酒瓶を空けたのだろう。
「……ねぇ」
と、不意に声をかけられた。誠司は相変わらず気恥ずかしさから来る居心地の悪さを抱えながら、女性の方をちらりと横目に見る。
「な、何ですか?」
「別に身構えなくてもいいわよ」
笑われながら言われて初めて、自分が知らず知らずのうちに体を強張らせていた事に気付く。「す、すみません」と頭をかきながら、誠司は一生懸命リラックスしようとする。
「ちょっと聞きたい事が、あるの」
「えっと、聞きたい事、ですか?」
女性がブランデーを呷る。あっという間に空になったグラスを置き、女性はひと息ついた。
「思ったのだけど……もしかして、慣れないお酒を飲む以外にストレス解消法がないクチ?」
続く問い。リラックスしかけた誠司は怪訝な顔をして、女性の方を向く。
「もしかして、図星?」
そう言いながら、彼女はすっと立ち上がる。ローブの下で胸がたゆんと揺れたが、誠司はそんな事を気にしている余裕がないくらいには困惑していた。
――彼女は、いきなり何を言い出すのだろう。


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