投稿小説が全て無料で読める書けるPiPi's World

全シン全レイ
【コメディ 恋愛小説】

全シン全レイの最初へ 全シン全レイ 0 全シン全レイ 2 全シン全レイの最後へ

全シン全レイ-1

怜が告白してきたとき、俺のどこを好きなのか尋ねてみた。
『顔です!』
満面の笑みで、即答された。


☆全シン全レイ☆


なんか面白いし、中身に多くを求められないのは楽でいい、ということで俺は怜と付き合うことにした。
けれど、最近俺はそれが不満だ。
「まつげ長いよねぇ。可愛い♪」
「うるせぇ」
「お肌スベスベ!化粧水、何!?」
「使うか」
「唇キレイ…チューしたい…」
「したら殺す。…つーか、おまえムカつく」
「えぇ!なんで?」
「…外見のことしか言わねぇだろ」
怜の口がポカンと開く。
なんだか、物凄く恥ずかしいことを言ってしまった気がする。
「だってさぁ…」
「何だよっ」
「慎くん、中身は良くないじゃん」
「…はぁ!?」
照れもぶっ飛んで、俺はただ愕然とする。
「いっつも怒ってるしぃ、命令ばっかだしぃ、口悪いしぃ…」
怜が淡々と指を折ってゆく。
また怒鳴り付けてやろうと思ったけれど、言葉が浮かばなかった。
怜の言うことは、間違いじゃないかもしれない。
褒める所のないものを褒めろと言っても、どうしようもないことだ。
「優しいのなんて、たまぁぁぁぁにしかないもん」
怜は『その顔だから、許せちゃうけど♪』と俺の頬にキスをしてきた。
「あれ?怒んないの?」
「そうか…」
「慎くん??」
「優しくないか…」
女に優しくする。
俺にとっては、かなりの難題だ。


「レイチャン」
慎くんは、神妙な面持ちで私たちのもとに歩み寄り、そう呟いた。
私も一緒にいた友達も硬直する。
「レイチャン」
「えっと…『レイチャン』って、怜?」
友達がそんな風に尋ねたので、私はケラケラと笑い声をあげた。
「そんなわけないよぉ。『オイ』とか『コラ』としか呼ばれたことないも…」
「そう、怜ちゃん」
慎くんが頷き、私はヒラヒラと振っていた手を止めた。
「迎えに来た。一緒に帰ろう」
「…ドッキリ?ギャグ?」
「本気」
慎くんは私の腕を掴み、椅子から立ち上がらせた。
私はまだ放心状態で、されるがままになってしまう。
「鞄よこせ。…じゃなくて、持ってあげるから貸して?」
「あ、ありがとうございます…」
怖い。
怒鳴られるよりも殴られるよりも(さすがに経験はないけど)ずっと怖い。
だって、あの慎くんが…。
「きゃあっ」
他のことを考えながら歩いていたので、何も無いところなのに転んでしまった。
「膝から血ぃ出てんじゃねーか」
「でも、これくらい平気…」
「待ってろ」
止める間もなく、慎くんは走り出していた。
そして、五分も経たない内に汗だくで帰還。
抱えていた紙袋から消毒液と絆創膏を取り出し、膝の手当てを始める。
…おかしい。
絶対におかしい。


全シン全レイの最初へ 全シン全レイ 0 全シン全レイ 2 全シン全レイの最後へ

名前変換フォーム

変換前の名前変換後の名前