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飃(つむじ)の啼く……
【ファンタジー 官能小説】

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飃の啼く…第14章-1

2週間の後、再び現れた女郎蜘蛛の静音に案内されるままに、私たちがたどり着いたのは、とある洋館。

レンガ造りの洒落た概観は、庭にはびこる雑草を手入れし、壁にあいた穴をふさぎ、割れた窓ガラスをはめ直せばもう少し改善しそうだった。こんなとこに住む人間の気が知れない…とはいえ、こんなところに住む人間は、澱みに手を貸すような奴だ。それならこの酷い住環境にも納得がいく。

「ねえ…正面玄関から入るの?」

私がボソッと呟いた。これじゃあ、道場破りみたいだ。面と向かって「たのもう!」って叫んで…

「今は留守ですから…。」

静音が言う。

「先に入ってください。彼が帰ってきたら、お知らせします。」

そう言って、外れかけたドアを指し示した。

「はあ…。」

私は、黙って彼女の言うとおりにドアをくぐった。その瞬間、飃が剣を抜く。ドアは勢いよく閉まり、走って体当たりしてもびくともしない。外側から、蜘蛛の糸で覆われてしまったのだ。

「やはり、罠だな。」

落ち着き払った飃の声に、私が関西人ならつっこみを入れているところだ。



あわてて九重を構える。割れた窓から、幽かに入ってくる日の光を頼りに目を細めて、闇の向こうを見据える。そこにある息遣いを、確かに感じながら。

「そう…それが君の細君というわけか…」



「その声…!?」

飃が声を上げる。彼の背後に居る私からも、驚いた顔が見えるようだ。闇の中に居た陰陽師は、ふふふ…と笑いながら、ほこり舞う光のなかに現れた。体中にぶら下げた小さなものがきらきら光る。

「久しぶりだなあ…飃…私の顔、覚えているか?」

あの瓶の中に入っているのは…虫だ。

虫。

夕雷が私に見せてくれた、伝言を届ける虫。

刺した者を操る虫。

それじゃあ、静音の主人というのは…



「巌(ヤン)…脅かすな、一体…」

飃が呟いて、剣を収めた。「何のまねだ?」

陰陽師はチッチ…と舌を鳴らした。

「澱みに属するものが、そんな名を名乗るはずがないだろう?今は蚩(おろか)。虫遣いの蚩だ。」

男は、見たことの無い中国の服を着て、楽しげに言った。

「お前が…?何故お前が澱みに加担する?」

蚩と名乗った男と顔見知りであるという飃は、珍しくうろたえている様だった。

「それを聞いてどうする、飃?私を更生でもさせるか?」

彼は妙な呼び方で飃を呼ぶ。ピャオ…?そう聞こえる。


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