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やっぱすっきゃねん!
【スポーツ その他小説】

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ICHIZU…G-7

夕方5時半過ぎに第4試合が始まった。対戦相手は瀬高中学。前の試合で、優勝候補の一角、中間中央を破って順々決勝へ進出したダーク・ホースだ。

1回表。青葉中学は、先頭の大野の2塁打をきっかけに信也と山崎のタイムリー・ヒットで2点を先制する。

その裏。先発の信也はマウンドで投球練習を繰り返す。

「ラスト!」

山崎が外の低めにミットを構える。信也はいつものゆったりとしたフォームからボールを投げた。
ボールは浮き上がるような軌道で、山崎のミットを鳴らす。

「オッケィ!良い球だ」

山崎がセカンドに送球しながら信也に声を掛ける。が、信也はしきりと左肩を回していた。

山崎はマウンドに駆け寄ると信也に訊いた。

「どうかしたのか?」

「いや…何でも無い」

信也はそう言うと、マウンドをならしだした。山崎はそれを見て怪訝な表情をすると、

「本当に何でも無いんだ…」

信也の言葉に山崎は、マウンドを後にした。

1回裏を危なげ無く、瀬高のバッターを3者凡退に斬った。
山崎は球を受けて、ストレート、変化球ともにキレていると感じ、先ほど見せた信也の仕草を、〈自分の考え過ぎ〉だと断ち切った。

2回裏。瀬高中学は信也に球数を放らせる作戦なのか、決め球をファウルで粘ってくる。
だが、山崎はすぐに作戦を見抜くと、内角高めのストレートやヒザ元に鋭く落ちるスライダーを決め球に変えて、瀬高中学のバッターを封じ込めていく。

明らかに青葉中学のペースになりつつある3回裏、瀬高中学の攻撃。

バッターは何とか塁に出ようとしたいのか、構えた時から肩に力が入っていた。
信也は山崎のサインに頷くと、ゆったりとしたモーションから1球目を投げた。

「エッ?」

山崎は驚いた。信也のボールは先ほどまでと比べ、球威が落ちていたからだ。

〈キンッ〉

打球音が響いた。打球はライトにフラフラと上がった。ライト羽生が追いかける。
打球はファウル・ゾーンからフェンス際に流れて落ちて来る。羽生はなおも追い、打球を掴んだ。
その瞬間、羽生はフェンスに激突してグランドに弾き飛ばされた。打球を捕る事だけに集中していたために、ぶつかった場合に備えての受身をとっていない。
羽生は倒れたまま動かない。しかし、彼のグローブには捕ったボールがおさまったままだった。

すぐにタイムがとられ、榊に永井、それに医師が羽生の元に駆けつける。
羽生はすぐに意識を取り戻したが、今度は肩を押さえてうめき声を挙げた。

医師が彼の肩付近を触診する。


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