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雨音、夜の誘い
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雨音、夜の誘い-2

目を開ける。


昔の恋は、いつも美化された状態で思い起こされるから、心に凍みる。
そして思い出はいつも断片的に瞼の奥に湧いて出て、そこにつながりはない。

一緒に花火をみに行ったこと。
誕生日を二人でお祝いしてたら帰りが遅くなってお母さんに怒られたこと。
サプライズに指輪をもらったけどサイズが合わなくて笑っちゃったこと。
喧嘩して泣きながらひとりで帰ったこと。
浩介がくれた言葉。
浩介が放った言葉。
涙、電車、制服、笑顔、ケータイ。

雨は変わらぬ調子で降り続け、アルミ柵が音をたてる。
雨樋を伝う水の音。
隣で眠る彼の寝顔、寝息。
布団からかすかにきこえる香水。

私を包む彼の腕。

思い出は少しずつ闇にとけていって、静かにその余韻を残す。
その余韻も段々遠くに消えていく頃、私はゆるゆると瞳を閉じる。

隣で彼が寝返りをうった。


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