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僕とお姉様
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僕とお姉様〜僕の失敗とお姉様の決心〜-5

『山田』
「ん?」
『あの、』
「何って」
『…いや、勉強頑張って良かったね!そんな山田があたしは好きさ!!』
「何だよ、その変なテンション」
『あたしは、いつもこうだよ』
「まぁいいや。話ってそれ?もう行かなきゃ」
『山田』
「だから―」
『あたし、ちゃんと言ったからね』
「何を?」
『何って…』
「マジで切るよ。話なら帰ってから聞くから」

周りの人間がぞろぞろと移動を始めたからちょっと焦っていた。
今話す必要はないと思ってて、お姉様が僕に"ちゃんと"何を言ったのかなんて考えもしなくて。

『…きって言ったのに』

声のトーンの変化に気がついた時にはもう手遅れだった。

「え?」
『山田なんか大っ嫌い!バカ!!』
「何だよ、いきなり」
『ブツッ、ツー、ツー…』

激しくバカ呼ばわりされた挙げ句一方的に切られ、しばらく携帯を見つめていた。
嫌いって言われた。
何で?
僕が何かしたか?
わけ分からん。
わけ分からんわけ分からんわけ分からん!
帰ったら改めて報告しようと思ってたのに。もう一回ちゃんとドライブに誘おうと思ってたのに。
せっかく交付された免許証も新品なのにくすんで見える。
さっきまでは、これから起こるであろう未来を考えてワクワクしていた。
でも今の電話で全部消えた。
普通に会話してただけだろ。それをいきなり嫌いって…
当然腹が立ってふてくされていた。でもそれは最初だけ。僕の怒りなんて超尻すぼみで、帰りの電車に揺られる頃には頭の中は不安でいっぱいになっていた。
あんな風に言われなきゃならない覚えはない。けどお姉様は、何もないのにバカだの嫌いだの言い出すような人じゃない。
あの日、何もないって言いながら泣いてた。
何もないわけないのに。
そう言えばここ最近様子がおかしかった。
キスをした日…、もう少し前、僕が後輩の子に告白された辺りも。
酔っ払って帰って来た時、もしかして嫉妬してくれてるんじゃないかって密かに期待をした。軽くでも好きだと言われる度に喜んだ。
でもすぐに考え直して小さな希望は心の隅に追いやった。
どうせまた僕の独りよがりだ。
頭の真ん中で常にそのセリフが陣取っている。
何の参考にもならなかった初恋なのに、トラウマだけはやたら大きかった。
あんなに惨めで情けない思いは二度としたくない。
お姉様を好きになって仲良くなればなるほど、それは巨大な塊になっていく。
不安だった。
早く帰りたい。
顔が見たい。
声を聞きたい。



その願いが叶う事がないなんて、この時の僕は考えもしなかった。

家を出る

そんなお姉様の決心に僕は最後まで気づかなかった。


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