投稿小説が全て無料で読める書けるPiPi's World

やっぱすっきゃねん!
【スポーツ その他小説】

やっぱすっきゃねん!の最初へ やっぱすっきゃねん! 39 やっぱすっきゃねん! 41 やっぱすっきゃねん!の最後へ

ICHIZU…E-3

「それね。お父さんが好きな言葉なの。昔、広島カープにいたピッチャーが好きな言葉だったんだって」

直也は嬉しさ一杯に表しながら帽子を被った。

その時、喧騒を遮るように大会関係者のハンド・スピーカー・フォンが響き渡った。

《選手の皆さん。入場行進準備のため、球場裏側の入口に集合下さい》

「よし!行くぞ」

キャプテン川口信也が皆を促す。
ここから先はベンチ入りメンバーのみで監督やコーチも帯動出来ない。まさに選らばれた者だけが味わえるセレモニーだ。

「じゃあカヨちゃん!頑張って」

有理は軽く手を振ると皆んなが待ってる方へと駆けて行った。

「ありがとうユリちゃん!」

佳代も有理に手を振った。そして、直也の方に視線を向けるとニヤッと笑った。

「よかったね!そんなの書いて貰って。もう、帽子洗えないじゃん」

「うるせえ!」

悪態をつく直也の顔は紅潮していた。



「姉ちゃん達遅いなぁ」

佳代の弟、修は開会式を両親と一緒に観客席で待ちあびていた。観客席といってもバック・ネット裏と内野に低い段数で設けてあるだけで、外野付近は金網で囲われている。
普通ならセンター後方に目立つバック・スクリーンも無く、スクリーンはネット裏の上に設けてあった。

「あなた、何してるの?」

「何ってビデオ撮影の準備じゃないか」

父親の健司は、同じ青葉中学関係者の居る場所で、ひとりビデオ・カメラを三脚に固定していた。が、それを嫁の加奈が問いかける。

「そんなモノで記録を撮るより、その瞼の奥に刻み込みなさい!」

「そんなモノってオマエねぇ…」

二人の間に暗雲が立ち込めた時、〈あの〜〉と遠慮がちな声があがった。加奈と健司が声の方に顔を向けた。そこには橋本淳が立っていた。

「アラッ、淳!随分おっきくなっちゃって。見違えたわ」

加奈は先ほどまでの剣幕はどこえやら、ニッコリ笑うと淳の身体をベタベタと触りだした。

「おばさん、お久しぶり」

ジュニア時代、佳代とチーム・メイトだった淳にとって加奈は〈恐い〉存在だった。とにかく我が子も人の子も関係無く、怒鳴られた記憶がほとんどを占めていた。

淳はおそるおそる加奈に言う。


やっぱすっきゃねん!の最初へ やっぱすっきゃねん! 39 やっぱすっきゃねん! 41 やっぱすっきゃねん!の最後へ

名前変換フォーム

変換前の名前変換後の名前