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胸音
【純愛 恋愛小説】

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胸音-8

「…!!」

そこにいたのはヒカルくんだった。ホームの列に並んでる。話しかけようかと、思ったけど、私服だったし、真面目な顔をしてたから躊躇した。

こっちはヒカルくんの家と反対方向だよね…?どこ行くんだろう。列の最後尾に並ぶ。

バレないように、同じ車両に乗り込む。彼が降りたのは終点の手前の駅だった。

そっと彼の後をついていく。彼が入ったのは病院だった。

―どこか悪いのかな?―

でも、彼は受付に寄らず、階段を上っていく。

病室に入る。名札を見て、ハッとした。

桜井 裕子… 高校の時、斉木くんと同じクラスだった女の子だ。話したことはなかったけど、かわいくて、いつも明るくて、憧れだった。入院してたなんて全然知らなかった。

ドアが少し空いていて、そっと中を覗く。化粧もしてなくて、髪もボサボサで、パジャマ姿の女の子。でも、彼女を見る斉木くんの目は、どんなキレイな女の子と話す時より輝いてた。きらびやかなお店のライトの下じゃなく、カーテンの隙間から入る太陽光は眩しかった。

彼が、私の好きな斉木 竜也くんだ。私は同じ人にもう一度恋をした。

彼女がどういう病気なのか、いつから入院してるのか、私には分からない。

ただ、斉木くんが東京の大学に行かなかったのも、ホストになったのも彼女の為っていうのは分かった。

「ごめん…俺、好きな子がいるから…。」

ずっと聞きたかった答えがようやく聞けたような気がした。

気が付くと、私は実家の近くに帰って来てた。涙がとめどなく流れる。ヒカルくんに会おうと思えば、いつでも会える。彼はいつでも優しい。でも、私の好きな斉木くんにはもう会えない。

…私は何を失って、何を得たんだろう?これから、どうしたらいい…?

ふと立ち寄った公園。今年も渡せなかったな。

チョコをゴミ箱に捨てようとする。

「待って!!」

「えっ!?」

振り返るとそこには…。

終わり


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