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世界の中でたたずむ、人
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あなたの えがきかた-5



私はソファーに座り、煎れたてコーヒーをすすりながら一枚目をめくった。 真っ青な絵だった。

全てが青色なのである。
どこを見ても青色であるし、青色意外の場所は無かった。 しかしそれは同一色では無く、様々な青色で描かれていた。淡い青色もあれば、濃い青色もあり、紺色に近い青があれば、透明に近い青もあった。
私はそれが『大きな木』の絵と気づくまでにしばらくの時間を有した。
本来、木という物は、大体が緑色と茶色を主として考える人が多いと思う。 葉が緑色で、幹が茶色である様に。私もそんな固定概念を持つ一人である。
しかしその絵は、全て青色の木なのだ。 それは事実であり、真実であった。 さらに言えば、その絵は青色で無ければならなかった様に思う。
そんな絵を見て、私から涙が流れた。

次のページをめくると、そこには『猫』の絵が描かれていた。 奇妙に耳がひしゃげていて、それがその猫を際立たせていた。
ついでに言えば、その猫は紫色をしていた。

次のページは、空の絵であった。 詳しく言えば空の絵では無く、空と大地との境目と、広がる雲と輝く太陽を描いた絵である。
さらに詳しく言えば今回は色は無く、全ては鉛筆で描かれていた。




スケッチブックには様々な絵が描かれていた。

次のページには電車が走っている所、その次のページには星空であった。 その他にも、自転車に乗っている人の絵や雪景色の絵、仮面を手に持つ女性の絵なんかもあった。
色がついている事もあれば、鉛筆だけで描かれている絵もあり、絵の具によって色づいている物もあれば、色彩の無い墨絵もあった。
全て違う絵で違う物を描かれており、関係性は無い様に思われた。そう感じられた。
しかしそれらにも共通して感じ事が一つだけある。

全てが彼であり、また私でもあったのだ。

それはつまり、私が描いた『ピエロ』の絵と同一種の雰囲気を、私はこれらの絵から感じとったのだ。
“=愛”とするのは安易な気もするが、その表現に近いものを感じる。 例えて言えば、渇望感に似ているのだった。




最後のページには私の描いたピエロに似た人物と、悪魔の姿をした泣き顔のピエロが、手を繋いでいる絵であった。
直感的に私はその二人が彼と私である事を理解し、今日何度目かの涙を流した。
どちらが彼かも、私かもわからないが(恐らくどちらも私でどちらも彼なんだろうと思う)、その二人は確実に私達であった。
それは私を酷く混乱させ、また幸せにしてくれた。

幸せに思える事が幸せであった。




私はその後、コーヒーを飲みながら何度も何度もスケッチブックをめくった。
その度に広がる感覚をゆっくりと体に染み込ませ、幸せを感じた。 得も言われぬ渇望は姿を薄め、ありがたくも消える事は無かった。

あたたかい涙と共に。

◆ ◆ ◆

結果、私と彼は恋人となった。
“恋人”という言葉にしてみると私達に似つかわしく無いが、それも仕方の無い事である。


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